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ケースで見る!「働くハイスペック女子」への処方箋

私がベビーシッターの積極的活用を勧める理由…コストは将来必ず回収できる

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表

 彼女は、議会開会中に子どもを預ける場所がないので議場に併設して保育園の整備をするか、ベビーシッター代の助成をすべきである旨の要望をしているようです。

 熊本市議の給与は、熊本市議会の「議員報酬、期末手当及び費用弁償に関する条例」によると、月収67万4000円です。これは熊本県の平均年収404万円よりもかなり上です。これはあくまでも平均値ですから、乳幼児を持つ他の若い年齢の女性と比較したら、おそらく相当なものでしょう。また熊本県の消費者物価指数は全国で43位と低いことから、熊本での生活費は比較的安くすむようです。

 彼女は市議として、議員の権利や利便性を論点にするより先に、保育園に子どもを入れることができず、またベビーシッター代も払えなくて困っている市民への支援を訴えるべきなのではなかったのかと思ってしまいます。

30代女性社員の離職率を下げるための処方箋

 産業医としてお邪魔している会社から、「30代女性の離職率を下げたいのだが、どうしたらよいか」という相談を受けることがよくあります。そんなとき私は、まずは保育助成を導入してみることを強くおすすめしています。「月収30万の壁」と言われることもありますが、月収20万円台の女性社員に、高額なベビーシッター代を払えと言うのは非現実的です。こんな当たり前のことすら人事担当者が気づいていないことが多いのに驚きますが、残念ながらこれが現実です。

 ある程度経済的余裕があってキャリア志向の強い女性社員には、貯金などするよりも、今だけの自己投資としてベビーシッターを積極的に利用して仕事や勉強に打ち込むようにアドバイスをしています。この投資は、将来的なキャリアアップで容易に回収することができるでしょう。

 ところで、先の「能動的子連れ出勤」の議員は、厳重注意処分となったようです。強行突破で乳児を連れてきた議員も、乳児を傍聴人だとみなして規則違反で議員を処分した議会も、両方大人げない気がします。でも議長は「女性議員が安心して参加できる仕組みを議論したい」という意向のようで、とりあえずよかったですね。迷惑したのは赤ちゃん本人だけだった模様です。
(文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表)

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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