現役を退いた後、工藤氏は筑波大学に通って勉強を続けました。その理由を詳しくは語りませんが、筆者が想像するに、以前から工藤氏が「ライフワーク」と言っていた、アスリートを目指す子供たちが体を壊すことなく成長していけるよう導くために、理論的背景を明確にしたかったのではないかと思います。
食事のあり方についても、ずいぶんと話をしました。お互いに意見が一致したのは、すべての基本は食事にあり、アスリートのみならず私たちが生きていくために、もっとも大切なものだということです。
プロ野球の各球団には管理栄養士がついていますが、その人たちは選手の体調管理、維持のためにサプリメントを勧めることが多いようです。激しく肉体を使うアスリートがサプリメントを使うことを全面的に否定はしませんが、それはあくまでも補助的なものであって、基本的には正しい食生活あってのことです。はじめから食生活が不完全な状態で、それを顧みず当然のことのようにサプリメントを使うのは、単なる依存でしかないと筆者は思います。そのようなサプリメントの使い方は、必ず弊害を生むので、賛成できません。
ましてや、サプリメントを売りつけるために、「エビデンス」と称して都合の良い情報だけを開示して、さも数々のサプリメントが必要であるかのように語るのは、犯罪と言ってもいい行為だと筆者は考えます。それは、特定の栄養素を過剰摂取すると、想像を超える害を与えることもあり得るからです。
私たちの体は、自分が食べたもので出来上がっていますが、必要のない栄養素を摂取してしまうと、体は混乱を来します。その混乱は、場合によっては長引くこともあります。長引いている間に、思わぬ事態が起きて、混乱がさらに混乱を呼ぶということにもなりかねません。もし、本当に足りない栄養素があるのであれば、その栄養素を十分に含んでいる食材を、料理の中に使うことを考えるべきです。これは、アスリートでも一般人でも同じで、基本中の基本です。
昨年、日本一に返り咲いたホークスは、今年は追われる立場です。まずはパ・リーグの各球団が、ホークスとの試合に向けてエース級のピッチャーをぶつけてくることと思います。それを蹴散らし、再び王者となれるかどうか。見どころ満載のペナントレースとなることでしょう。
今年もチームを率いる工藤氏は、ご自身の健康を守るために、食事に最大限、気を遣うことと思います。自分が健康であって初めてチームにも貢献できるし、日本中のファンを喜ばせることができるわけですから。
そして、それはこの連載を読んでくださっている方々も同じです。ご自分が健康であってこそ、ご家族を守ることができ、お仕事を続けることができるのです。そのためにも、拙著『じつは体に悪い19の食習慣 [改訂版]』(ワニブックスPLUS新書)を、お役に立てていただけたら、うれしく存じます。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)