ここで重要なのは、「日本社会は積極的に女性を差別しようとしているのではない。あまり考えずに慣習として男性を優遇していたところ、男女平等度で後進国となった」という点です。男性は女性を滅多打ちにしたい悪魔ではありません。また、女性も「女がそんなにがんばったって」と言って差別を助長することはままあります。
私が新卒で外資系企業の総合職へ就いたとき、「女の子なのに働かなきゃいけないなんて、かわいそうに」と複数の男女を問わない同級生から言われました。「男は敵だ」でもなければ「女の敵は女」でもありません。
男女平等ランキングも、悪化したというよりは日本だけ改善しなかったのです。この10年、日本は男女問わず「このままでいい」という気持ちでズルズルやってきたのでしょう。個人的には男女平等を促進したいという気持ちはありつつも、日本人の大多数が望んでいるなら仕方ない。「私は私で、男女平等にするメリットをささやかに伝えていこう」という気持ちでいました。
それに、各国へ滞在するなかで「世界のどこにだって男女差別はある」という事実にも気づかされました。飲食店で女性へはメニューの価格を表記しないイタリア、共働きで家事もこなさざるを得ないイギリス、専業主婦が財布の紐を握るなんてあり得ないドイツ――。どの国にも課題があり、日本はある面で他国より男女平等が進んでいるともいえるのです。
日本に外国人が来てくれない
ところが、ここで問題が生じます。労働人口の減少です。日本は少子化が長期間続いており、今すぐに児童が増えても将来の労働力不足は防ぐことができないという見方が広がっています。となれば、税金を負担するためにシニアが活躍したり、移民を増やしたりするしかありません。
しかし、海外の人々にとって「あそこって、男女差別激しいんだって」と噂になっている国へ行く気持ちは穏やかではありません。「嫌なら出ていけ」というのは勝手ですが、移民には医師や看護師など高齢社会に欠かせない専門職や、若者の代わりに活躍してくれるであろう肉体労働者も含まれています。いかに世界中でお国柄に沿った男女差別があるにせよ、「日本って、意外と男女差別ないんだよ」というイメージを植え付ける必要があるでしょう。男女平等はメンツや価値観の問題ではなく、世界の優秀な人材を誘致するための材料なのですから。
(トイアンナ/ライター、性暴力防止団体「サバイバーズ・リソース」理事)