『ウマ娘 プリティーダービー』異常な熱狂のワケ…“底なしの楽しさ”を徹底レビュー
今回は競馬シーズン真っただなかという季節柄を踏まえて(?)、爆発的な売上で話題となっているサイゲームスのスマートフォンゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)を取り上げたい。
本作はゲームに先んじて展開されたテレビアニメやスピンオフのマンガなどの評価は高かったものの、今年2月にandroid/iOSで配信が開始されるまでは、競走馬を“ウマ娘”と呼ばれる美少女キャラクター化するというコンセプト、そのうえで改めてウマ娘たちが競馬場を模したコースを走ってレースを行なうという独自の世界観、2018年冬(当初の配信予定時期)から続いたあまりにも長かった“事前登録期間”など、良くも悪くもさまざまな面から一目置かれる作品だった。
しかし、いざゲームが遊べるようになると、android/iOSアプリのセルラン(セールスランキング)で1位を独走、4月上旬には500万ダウンロードを突破、SNS等では毎日のようにウマ娘の育成論(ゲーム攻略法)や元ネタとなった競走馬のエピソードが話題になるなど、異様ともいえる盛り上がりを見せている。
本記事ではそんな熱狂ぶりを見て「ソーシャルゲームは課金が必要だし、今から始めるのは厳しいのかな……」と逆に引いた感じになっている人向けに、比較的緩めに『ウマ娘』を遊んでいる自分のようなプレイヤー(課金額は1万円以下)から、本作の魅力を語っていきたい。
ゲームとしての完成度、演出の質の高さで多くのユーザーを惹きつける
『ウマ娘』がヒットした要因としては、まず何よりアプリゲームとしての完成度が非常に高かったことが挙げられるだろう。まずゲームプレイ中に起こるイベントやレース、レース後に行なわれるウイニングランならぬ“ウイニングライブ”など、あらゆる演出のクオリティが非常に高い。イベントシーンでのウマ娘(キャラクター)たちが質の高い3Dモデルでかわいく描かれているのはもちろん、レースシーンは迫力満点。実際にゲームを触ってみるまではまったく想像だにしていなかったのだが、レース中のウマ娘がとても“カッコよく”見えるのには驚かされた。
個人的にはこういったウマ娘たちの動きを見られただけでも、『ウマ娘』を触ってみてよかったと思えたほど。なのでキャラクターをパッと見て興味を持った人は、それだけで試しにアプリをダウンロードしてみてもいいのではないだろうか。
オイシイ部分は無課金で十分楽しめる
ゲーム内で起こるイベントやウマ娘それぞれに用意されたストーリーを体験するのが目的であれば、ほどよい難易度でウマ娘の育成を進められるのも本作の特徴のひとつ。
ウマ娘の育成にはプレイヤーの反射神経が要求されるようなアクション要素はなく、ターンごとに練習、レースへの出走、休養といったコマンドを選択していくことでゲームは進行。現在ゲーム内で選べる育成シナリオ“新設! URAファイナルズ”では上記のようなターンごとのコマンド選択をくり返してウマ娘を成長させ、一定期間ごとに設定された育成目標を攻略。シナリオの最後に用意された特別レース、URAファイナルズ優勝を目指していく。
育成は担当ウマ娘の脚質、育成目標に設定されたレースに合致した能力を上げられる練習をウマ娘のやる気や体力と相談しながら休養を挟んでいくプレイヤーの選択のほか、ターン経過の前後に発生するスキル習得イベントや、練習の質に関わるサポートカードの存在が最終的な結果に大きく影響する。
このサポートカードを充実させるためにガチャを回すのが『ウマ娘』最大の課金ポイントなのだが、URAファイナルズを制覇して担当ウマ娘ごとのグッドエンドを見るということが目標であれば、ゲーム開始時に得られる無償ジュエルをサポートカードガチャに回すことで、課金はほぼ必要なくなる(あまりにガチャの結果が芳しくない場合はゲームのやり直し、いわゆるリセマラを行なったほうがいい)。
また、ゲーム開始から間もない時期はGⅢ~GⅠ初勝利などの報酬や、「ウマ娘を〇〇人育成しよう」といったミッションを達成することで、なにかと無償ジュエルが手に入る。こちらをサポートカードガチャに回した場合はさらなる戦力充実が望めるし、もうひとつのガチャ、育成ウマ娘を獲得するためのガチャに使った場合は、よほど運が悪くない限り、★1、★2に分類される16人のウマ娘が手元にそろい、育成のバリエーションが広がったり、より多くのストーリーが見られるようになっている。
この16体+ゲーム開始時にもらえる交換券で手に入る★3ウマ娘1体を育てきるだけでも十分な満足感を得られるので、「『ウマ娘』には興味があるけど課金はちょっと……」と思っている人には、課金してガチャを回すかどうかはひとまず置いておいて、とりあえずゲームを始めてみることをオススメしたい。
日々アップデートされていくウマ娘育成の奥深さ
課金せずともゲーム内のストーリーやウマ娘の魅力は堪能できるようになっている本作だが、そこで終わりにさせない魅力があるのが、ある意味『ウマ娘』の恐ろしいところ。より高いレベルの育成を目指すと、課金以上にやりこみがモノをいう世界が待っているのだ。
そんなやりこみを象徴するような存在になっているのが、ヘビーユーザーの間では“因子ガチャ”と呼ばれる、よりよい継承ウマ娘を誕生させるための周回プレイ。育成が終了したウマ娘は他のプレイヤーと対戦するチーム競技場や定期的に開催されるイベントレースに参戦できる殿堂入りウマ娘になると同時に、新しいウマ娘を育成する際に能力値やボーナスを与える継承ウマ娘としても利用可能になる。
しかし継承ウマ娘として優秀な存在かどうかは、チーム競技場やイベントレースで勝てるウマ娘とは必ずしもイコールにはなっていないのがポイント。継承ウマ娘としての“強さ”は育成が終了した際に得られる“因子”の質によって決定され、因子の中でも重要視されている青因子(スピード、スタミナ、パワー、根性、賢さといった基礎パラメーター)の質の高さを追求するには、育成中に5つのパラメーターをバランスよく上げていくことが有効とされている(5つすべての評価をB以上にして育成終了)。
しかし5要素すべてをB以上にする育成は(筆者の腕では)なかなかに難しく、またバランスよくパラメーターを上げようとすると、育成1、2年目のレースで1位を取りこぼし、育成プランに狂いが生じる……なんてことも少なくない。
そしてくり返しになるが、継承ウマ娘として優秀(になる可能性のある)なウマ娘と、勝てる殿堂入りウマ娘は異なり、さらにいえば殿堂入りウマ娘は「このタイプがチーム競技場で最強」というパラメーター振りやスキルが固まっていない点も、育成シミュレーションとして本作をやりこみたい層にとっては、試行錯誤のしがいがあるという魅力につながっているようだ。
筆者がTwitterや攻略サイト等で見聞きした範囲でも“強い”とされるウマ娘の定義は頻繁に移り変わっており、最初は「スピードと賢さを上げた逃げや先行タイプが強い」という風潮だったが(このタイプはいまでもURAファイナルズ制覇が目標であれば安定しやすい)、青因子(とくにスピード)の重要さが周知され始めた頃には、スピード、スタミナ、パワー、賢さをBまで上げる“4B育成”がトレンドに。
しかし、やりこみ勢が青因子ガチャを終えた頃になると、基礎ステータスの中でやや軽視されていた根性やスタミナの重要性も説かれ始め、差しタイプの復権やサポートカードやスキルの流行も変化……とサービス開始から2カ月とは思えない目まぐるしさで育成のトレンドが移り変わっている。このような育成シミュレーションゲームとして簡単に底が見えない奥深さも、『ウマ娘』の大ブームを支える要因のひとつだろう。
ついに発売されたゲームの爆発的ヒットで、これ以上ない好調な滑り出しをみせ、一躍超人気コンテンツになった『ウマ娘』。本作に限らずヒットしたソーシャルゲームは数年単位で続く盛り上がりをみせることが半ば常識と化しているので、少しでも興味のある人はぜひ試しにプレイして、コンテンツが立ちあがった初期ならではの熱気を感じつつ、ゲームそのものも楽しんでみてほしい。
(文=丸谷健太/ライター)
ゲーム名:ウマ娘 プリティーダービー
メーカー:サイゲームス
対応機種:android/ios、DMM GAMES(PC)
ジャンル:育成シミュレーション
発売日:2021年2月24日(android/ios)、2021年3月10日(DMM GAMES)
価格:基本プレイ無料+アイテム課金