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中国~欧州間で機密処理されたビデオ会議に成功
さらに、17年夏に中国は墨子号を使って地上と衛星との間で単一光子テレポートに成功し、量子通信が遠距離通信にも使えることを示しました。この技術を基に、18年1月下旬、墨子号が発行する量子暗号鍵を使って暗号化した通信回線で、オーストリアのウィーン大学と中国の中国科学技術大学の間で機密処理されたビデオ会議を開催することに成功しました。
量子鍵は、誰かが暗号鍵を盗み見すると性質が変化して、受け取った人は鍵がコピーされたことを知ることができます。盗み見されたことがわかれば、その鍵は捨てて、墨子号に別の暗号鍵を要求し、墨子号は新しい暗号鍵をつくって会議参加者に配信します。
そして、誰にもコピーされていない鍵が受け取られるまで、鍵の取得と廃棄を繰り返します。送信側と受信側が誰にもコピーされていない鍵を入手できれば、その鍵で通信データを暗号化して、セキュリティが確保された2点間通信が確立します。この技術を「量子鍵配送」といいます。
墨子号そのものは既存の技術でつくられているため、衛星がクラッキング(侵入や改ざんなどの不正利用)されれば鍵の信頼性が保証されなくなるという問題は残っています。しかし、墨子号を開発した中国の科学者らは、「それは解決が困難な問題ではない」としています。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 環境安全部製品安全グループ グループリーダー)
【参考資料】
「墨子号」(互动百科)
『宇宙と地球を視る人工衛星100 スプートニク1号からひまわり、ハッブル、WMAP、スターダスト、はやぶさ、みちびきまで』 地球の軌道上には、世界各国から打ち上げられた人工衛星が周回し、私たちの生活に必要なデータや、宇宙の謎の解明に務めています。本書は、いまや人類の未来に欠かせない存在となったこれら人工衛星について、歴史から各機種の役割、ミッション状況などを解説したものです。
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