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妻の家事を1日2時間減らすと、生涯年収が2億円増える理由

取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト
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――育児中の女性にとって働きやすい職場にするには、育児と両立できる固有の業務モデルの設計が必要なのかなと思います。『働く女子のキャリア格差』で取り上げたロート製薬、ユニリーバ・ジャパン、クラシコムでは、そうした業務モデルが設計されているのでしょうか。

国保 いえ、業務モデルの問題だけではないと思います。この3社に共通しているのは、なぜダイバーシティが経営戦略として必要であるのかを理解していることです。個人の人生を尊重するという考えはもちろんですが、それ以上に、働き方の多様性を確保すれば個々人の能力を引き出せて、それがひいては自社の成長につながることを経営陣が理解していることです。そのために環境を整えているのであって、3社とも多様性の確保を競争戦略として取り組んでいます。

――レナウンが、子育てをする販売員を応援する同僚の販売員を「ほほえみサポーター」として、月3000円の手当を支給する制度の発足を発表しました。子育てをする販売員は気兼ねなく同僚に仕事を頼めるようになると思いますが、このような制度も働き方の多様性にとって有効なのでしょうか。

国保 レナウンさんの制度については承知していませんが、私は育児中の女性に限定した制度運用はあまり勧めていません。独身社員がお稽古事にいくときにも使えるような制度にしないと、育児中の社員しか優遇されないという不満が社内でたまってくるからです。ユニリーバさんのフレックス勤務制度や在宅勤務制度は、育児中の社員だけでなく、誰もが利用できる制度になっています。

――育児中の女性に限定すると、「短時間退社は周囲の社員に申し訳ない」という感情が膨らんでしまうのですか。

国保 申し訳ないという気持ちになってしまうこともあるでしょうし、さらに「育児は女性がするもの」という考えが強化されてしまいます。そうなると、育児のために早く帰りたいと思う男性社員も逆に帰りにくくなってしまいます。「男性のくせに」というような空気になってしまって帰れなくなり、その結果、女性だけに育児の負担が偏っていきます。

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