シャンプー、知らずに使うと頭皮が腐る? ベストバイはどれ? 買ってはいけない商品も
最近ではシャンプーの多くが「ノンシリコン!」と宣伝し、シリコンオイル(厳密にはシリコーンオイルと言い、シリコンとはスペルが違い、全く別の言葉)を、さも頭皮を腐らせる悪の成分であるかのうように表現したり、防腐剤無添加こそ正義という風潮が見られます。
防腐剤と一言にいっても、使われる成分は食品添加物レベルの弱いものから、一般的な防腐剤であるパラベンの類いまで様々。しかし、防腐剤が入っていること自体は大きな問題ではなく、その濃度が最も問題とすべきです。
そもそもどうして防腐剤が悪なのでしょうか? 腐らないという反自然な部分にオーガニック好きな人はうっかり嫌悪感を持ってしまうのでしょうが、では逆に防腐剤が入っていなかったら、完全無添加のシャンプーに雑菌が入り込んで腐敗した場合を想定しましょう。高級アルコール系以外のシャンプーには大なり小なり植物から採った油が含まれ、さらにはグリセリンなどの細菌にとっての栄養素が豊富に含まれています。
細菌の汚染によって、さまざまなアレルゲンや有毒物質、中毒性毒素諸々が生み出されてしまうので、完全防腐剤無添加は、そのリスクが常にあるということを頭に置いておかねばなりません。
ノンシリコン伝説は、実は意味不明なものです。シリコンオイルは、豆腐の剥離剤として使われているくらいには無害で、当然髪の毛についたところで、髪をさらさらにする以外の悪さは特にしません。というかほとんどの化学物質と反応しないと言ってもよいくらい安定した物質なので、髪の毛につきやすく、洗浄剤で落としやすく、まさに理想の髪質改善剤です。ノンシリコンの流れを受けて、メーカーもシリコンと表記せず、メチコンやジメチコンといった一目で分かりにくい名称に換えていたりと根が深い問題のようです。
マイナスイオンに関しては、もはや真面目に語るのも馬鹿馬鹿しい話なのですが、そもそも科学用語にマイナスイオンという言葉は存在しません。マイナスイオンではなく陰イオン(アニオン)と呼びます。
マイナスイオンって結局何が出てるの? という質問に対しても各社てんでばらばらで、帯電した粒子を飛ばしているといったもので、それがどのように良いかはまったく研究もされておらず、完全にオカルトの領域になっています。ついでに最近はやりのプラズマクラスターも同様に意味不明です(苦笑)。
このようにシャンプー一つとっても身近な商品になればなるほど、オカルトめいた話が平然と出てくるのが日本という不思議な国です。
パッケージの言うままでなく、「ちょっと待って」と自分の頭で考えて物を買うようにすれば、たいていの「うますぎる」話はナイナイということが分かるはずです。
(文=へるどくたークラレ)
【尚、本記事は、サイエンス・ライターがつづる化学コラムです。報道の見地から行っているものであり、再現性やその内容を保証するものではありません。一切の責任を編集部及び著者は負いかねます。また薬を服用する際は、医師や薬剤師にご相談ください。】