東京五輪、迷走の連続で露呈した招致計画の「ウソ」…いつの間にか消えた「コンパクト五輪」
歪みに歪んだ五輪レガシー論
大会組織委員会が掲げる新たなコンセプトの3番目は、次のようなものだ。
「東京1964大会は、日本を大きく変え、世界を強く意識する契機になるとともに、高度成長の弾みとなった大会。東京2020大会は、成熟国家となった日本が、今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ承継していく」
なるほど、1964年大会は日本を大きく変えた。現在の東京は、1964年五輪のレガシー(遺産)の上に成立しているといっても過言ではない(図表参照)。
これに対して2020年大会は、当初期待された景気のいい話が、いずれも五輪までの完成は難しいという結果に終わっていく。田町と羽田空港を結ぶJR羽田空港アクセス線。泉岳寺~押上間をショートカットし、羽田・成田間の輸送効率を高める都心直結線。東急多摩川線と京急空港線を結ぶ蒲蒲線。地下鉄8号線(東京メトロ有楽町線)の豊洲から住吉への延伸。外郭環状道路の関越~東名間の開通などだ。
都心と豊洲を結ぶ環状2号とJRの品川新駅は、一応、五輪までに暫定開業される。だが、前者はもともと豊洲新市場へのアクセス道路だ。後者も五輪との直接の関係は薄い。
インフラ整備以外でも、2018年6月に施行された「住宅宿泊事業法」(民泊新法)は、居住環境の悪化を憂慮する各区の反乱に直面している。中身の良し悪しはともかくとして、「統合型リゾート」(いわゆるカジノを含む)の整備も五輪には到底間に合いそうもない。五輪の名の下に整えられたのは「テロ等準備罪」くらいだ。
こうしたなかで、五輪レガシーも歪みに歪み、1964年大会ではレガシーのごく一部にすぎなかった競技場の整備に議論が矮小化されていく。なぜそうなったのかは、容易に想像がつく。五輪レガシーというからには、コンセプトを具現化させたものでなければならない。しかし、コンセプトが揺らぐ2020年大会と、我が国の可能性を世界に示し成長の弾みを得ようと国民が一丸となった1964年大会とでは、レガシーに対する位置づけも意気込みも、端から異なっていたからだ。
挙句の果てに出てきたのが、唐突なサマータイム導入論。結局は見送りとなったが、ここまでくるともう茶番としかいいようがない。
『なぜか惹かれる足立区~東京23区「最下位」からの下剋上~』 治安が悪い、学力が低い、ヤンキーが多い……など、何かとマイナスイメージを持たれやすい足立区。しかし近年は家賃のお手傾感や物価の安さが注目を浴び、「穴場」としてテレビ番組に取り上げられることが多く、再開発の進む北千住は「住みたい街ランキング」の上位に浮上。一体足立に何が起きているのか? 人々は足立のどこに惹かれているのか? 23区研究のパイオニアで、ベストセラーとなった『23区格差』の著者があらゆるデータを用いて徹底分析してみたら、足立に東京の未来を読み解くヒントが隠されていた!