日本では脳卒中が1951年から死因の第1位で、国民病といわれていました。脳卒中による死亡率は65年から減少していますが、その大きな理由は高血圧の治療や食塩を減らした食生活の変化により、高血圧性脳出血の発症と死亡率が劇的に低下したことです。
その結果、81年にはがんが死因の1位になっています。最近では、脳出血は脳梗塞(脳血栓)の3分の1にまで減っていますが、日本の脳出血の発症率は諸外国の2~3倍と依然として高く、まだまだ注意が必要です(脳卒中治療ガイドライン2015)。
月曜日に多発
最近のデータでは、脳出血は冬に一番多く、夏に一番少ないことがわかっています。これは、冬の低温が血圧を上昇させるためと考えられています。脳梗塞が夏に多いのとは逆の現象です。
興味深いことに、脳出血の発症は月曜日に飛び抜けて多くなります。特に男性にその傾向が高く、週末の休養から明ける仕事初めによるストレスと考えられています。やはり仕事は“ストレスのもと”なのでしょうか。一日の中での発症時間は起床時、昼、夕方が多く、夜間睡眠時は多くありません。脳梗塞は起床時がもっとも多いので、両者合わせた「脳卒中」は起床時に起こりやすいといえます。
高血圧性脳出血は決まった発症部位があります。被殻出血、視床出血、小脳出血、橋出血、皮質下出血です。部位によって、症状や後遺症がまったく違います。
脳出血は脳梗塞と違い頭痛、嘔吐が先行することが多いので、頭痛、嘔吐があり、崩れるように倒れ、手と足が動かない場合は脳出血である可能性が高くなります。橋出血などは突然倒れて意識障害となることがよくあります。
脳出血の約60%を占めるのが中央部で起きる被殻出血
それでは、一番多い被殻出血についてお話ししましょう。
・被殻(ひかく)出血
高血圧性脳出血の中で60%以上を占め、一番頻度の高いものです。脳の中のほうにある被殻が出血すると、反対側の手足が麻痺し、感覚にも障害が出ます。出血が大きいと、意識障害が進んできます。右利きの人は言葉を理解してしゃべる機能が左の脳にあるので、左の脳出血が起こると、利き手の右手の麻痺だけでなく言語障害(失語)が起こり、しゃべれなくなることがあります。