がんを取ったらウエストが細くなった!
ナオミさんの4年間の闘病生活には、何度かターニングポイントがあるという。
第1期は、2013年にがんが発覚してから大腸の腫瘍を摘出、抗がん剤治療を行った標準治療の約2年間。第2期は、もはや手術ができないと地元の医者に言われた腹膜播種を摘出するため、2015年秋に滋賀県の病院で大手術を行い、腹膜播種、卵巣、子宮、脾臓、大網(腹膜の一部)、大腸の一部を摘出してからの時期。そして第3期は、2017年10月5日に亡くなるまでの、最期の1週間……。
――抗がん剤治療の副作用、そのつらさについては、さまざまな人によって語られています。おしゃれ好きのナオミさんの場合、“第1期”に開始された抗がん剤治療は実際のところ、どのような影響がありましたか?
菊地貴公 副作用の出方はひとりひとり違うので、これはあくまでもナオミちゃんのケースだということが前提なのですが……彼女の場合は、抗がん剤を半日くらい病院で点滴したあとに、体内につながったチューブが付いたタンクをもらって、引き続き自宅で2日間ほど注入。これが、そのまま治るのかなと思うくらいよく効きました。
副作用も少なく、手足が少ししびれる程度。脱毛もありましたがウィッグをつけるほどではなく、ごはんも普通に食べられました。大好きなおしゃれに関してもまったくモチベーションが下がらず、逆に「こういう状況だからこそ、もっと楽しくしたい」と、より深くはまるようになったくらいで。
2013年11月の大腸の腫瘍摘出手術に関しても、実はその腫瘍が長年の便秘の原因となっていたようで、手術後はその便秘が見事に解消。ウエストがスリムになって、「今まではけなかったパンツがはけるようになった!」なんて喜んでいました。「大腸の切除後、ストーマ(人工肛門)が付くとジーパンがはけなくなるらしい」「腹水が溜まってきたら、あのパンツがはけなくなるかも」などなど、生きるか死ぬかの話よりも、洋服のほうが気になっていた感じです(笑)。ちなみにおしゃれへの気力は、亡くなる1週間前に友人たちと食事に行ったときに「やっとあの服を着て外出できる!」と語ったくらいで、最期まで変わらずにありました。
ネットショッピングがある時代でよかった。闘病しながらでも、ネットを通じていつでもきらびやかな世界に行って買い物ができましたから。本のタイトルに「オシャレは抗がん剤より効くクスリ?」と副題を入れましたが、本当にネットショッピングは、冗談ではなく、治療に一役買っていたと思います。
ただ、病状が悪化して選択できる治療がなくなってしまった頃には、いよいよ覚悟をしたのか、欲しい服を見つければ以前は『これを着るためにがんばる!』なんて言っていたのが、「買っても着ないかもしれないし……」という言葉に変わっていきましたね。
(構成=安楽由紀子)
おしゃれ大好きな妻に、ステージIVのS状結腸がんの診断が下る。それでも妻は、おしゃれへの情熱を捨てなかった。テレビ番組ディレクターが綴る、4年間に渡る愛妻との闘病記。著者:菊地貴公 あとがき:犬山紙子 発売:TYPHOON BOOKS JAPAN