『まんぷく』のモデルになったチキンラーメンも脚気の元となったわけで、ドラマで描かれているような、開発当初からビタミンも豊富で栄養満点の食品というのは事実ではないのです。ドラマのなかで、ことさら栄養価の高い商品のようにアピールするのは不自然極まりなく、ジャンクフードという事実を払拭することを狙っているかのように思え、腹立たしくさえなります。せめて、テロップで「当時の栄養学では栄養豊富とされていました。」とことわりを示してほしいものです。
さらに、最近はカップ麺の売り上げが伸びて袋麺離れが進んでいるので、野菜類を加えて栄養バランスを良くすることがますます困難になってきました。
揚げ油も大問題
袋麺にせよ、カップ麺にせよ、インスタント麺の最大の特色は、麺を高温で揚げたフライ麺であることです。この油にも、問題が潜んでいます。
現在の麺の揚げ油には、パーム油が使用されています。パーム油の害については、本連載(『日本人が大量摂取のパーム油は超危険!パン、菓子、カップ麺…発がんや糖尿病のリスクも』など)ですでに述べましたが、パーム油は大腸がんや糖尿病の原因となると報告されています。日本の家庭では使われることがほとんどないので、馴染みが薄いパーム油ですが、インスタント麺のほか、ファストフードや惣菜の揚げ油、パン、ドーナツ、ポテトフライ、チョコレート、アイスクリーム、ケーキ、クッキーなどの加工品に大量に使われており、日本人は平均して1人当たり年間4kgも消費しているのです。
ドラマで見るまんぷくラーメンの開発秘話はとてもおもしろいですが、出来上がった栄養満点のはずの「まんぷくラーメン」も、のちに完成するカップ麺も、栄養が偏り、揚げ油にも問題のあるジャンクフードなのです。災害時などには貴重な食品になりますが、常食するのは避けるべき商品といえます。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)
【現在のチキンラーメンどんぶりの成分と原材料】
栄養成分表示 [1食 (85g) 当たり]
熱量386kcal (めん・かやく: 363kcal 、スープ: 23kcal)
たんぱく質9.6g
脂質14.9g
炭水化物53.3g
食塩相当量5.3g (めん・かやく: 2.3g 、スープ: 3.0g)
ビタミンB1 0.26mg
ビタミンB2 0.40mg
カルシウム 132mg
原材料名
油揚げめん(小麦粉、植物油脂、しょうゆ、食塩、チキンエキス、糖類、香辛料、たん白加水分解物、卵粉、デキストリン、香味調味料、オニオンパウダー)、かやく(卵、ねぎ)/加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、炭酸Ca、かんすい、酸化防止剤(ビタミンE)、増粘剤(キサンタンガム)、カロチノイド色素、ビタミンB2、ビタミンB1、(一部に小麦・卵・乳成分・ごま・大豆・鶏肉を含む)
チキンラーメンどんぶりのサイトより
https://www.nissin.com/jp/products/items/8721