関節痛の特効薬、グルコサミンとコンドロイチンのサプリは無意味?不正表示横行?
いくつかの分子が連なったポリマーであり、消化吸収できるものではなく、理由は後述しますが、効果は「あやしい」の一言に尽きます。
次に、グルコサミン。こちらはグルコース(ブドウ糖)の一部がアミノ酸の特徴であるアミノ基という分子構造を持ったもので、自然ではカニやエビの殻に多く含まれているので、テレビCMなどで「日本のカニにこだわった」などと宣伝しています。実際は、カニの缶詰づくりの際に廃棄される殻を買い付けているだけなので、カニ自体を材料というのは、やや誇張した感じです。
成分はエビやカニの殻の成分なので基本的に無害ですが、抽出時にどうしてもエビカニのタンパク質を除去できないので、エビやカニにアレルギーのある人は服用できません。
さて、これらの成分は、どのような効果があるとされているのでしょうか?
●医薬品としての根拠は?
まず、医薬品としてコンドロイチンが使われているといっても、神経痛などに使う注射薬でしか存在しません。そもそも口から摂取すると体内で分解されてしまうので、えびせんを食べているのと大差はありません。注射薬として直接患部に注入する方法が取られているという点が重要です。
飲用タイプにコンドロイチンの処方薬は存在しません。
一部で「リウマチの薬にも配合されている」といわれていますが、製剤の安定剤として、つまりただの添加物であって、コンドロイチン自体が神経痛などの治療成分として使われているわけではありません。
コンドロイチンは「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り、医薬品と判断しない原材料」という扱いになっており、医薬品としても最も安全な第3類(コンビニ売りが可能な薬剤)と認定されています。かつてはコンドロイチンが関節痛に効くといわれていた時代もあったようですが、現在は第3類医薬品または単なる健康食品として販売されています。
しかし国としては、一度医薬品として認定してしまったものを、簡単に取り消しはできません。まったく効果がない、または有害であるなどと立証でできれば取り下げもされるのでしょうが、一部の有効例もあり、そもそも無害な成分なので、玉虫色な感じですが医薬品成分として残っているというのが実情のようです。
●論文・学会という魔法の言葉
さて、サプリメントメーカーのCMで、「学会で数々の紹介を受けた」という紹介もされていますが、学会とはそもそもなんなのでしょうか?
本来の「学会」は、100人以上の博士や医師などの専門家がいるといった基準を満たした上で、国の日本学術会議に申請をして認可されたものを指します。
しかし、一部の宗教法人や聞いたこともないようなマニアックな学会がいっぱいあるので、不思議に思う人もいるでしょう。現在の日本の法律では、別に学会と勝手に名乗っても罰せられることはないのです。
従って、「つまようじの溝を掘る学会」「全裸でユリイカと叫びつつ、深夜の街を疾走するぞ学会」などを発足して会員を集めて活動をしても、問題はないのです。
最近は、ある程度資本のある企業もサプリメントビジネスに乗り出しており、独自にサプリメント学会をつくっています。そこで論文として提出させれば、学会で成果が発表されたという実績を積み重ねることは造作もありません。
また、コンドロイチンが関節痛などに有効とされている論文の多くは、被験者も実験者も偽薬か本物か区別がつかないように実験を行う「二重盲検法」を用いた例が多くあります。これは実験者や被験者が「これが有効成分で、実際に効果があるかどうか実験します」と伝えると、思い込みで効果が出てしまうことがあるので、精神的なバイアスを防ぐために必要な方法なのですが、やっつけ研究のやっつけ論文には残念ながら足りないものが多いといえます。
そもそも論文は論じるだけですので、論文に載ったからといって事実とは限らないわけです。近年世間を賑わしているねつ造騒ぎは論外にしても、再現性のあやしい論文など山のようにあります。
数多くの実験で得られた成果を論文化し、それをまた別の学者が再現実験、追証を行い、事実として固められていくのが科学です。
●肝心の成分が入っていないグルコサミン
さて、それでも「グルコサミンに効果がまったくないとは言い切れない」という向きもあるかと思います。しかし、その肝心の成分の配合量からしてあやしいのが、グルコサミン商品なのです。
グルコサミンサプリメントの主原料であるN-アセチルグルコサミンの原価は、仕入れ場所にもよりますが、およそ1kg当たり3万円ほどです。大半のメーカーはグルコサミンを単離するためのプラントなど持ち得ないので、外部企業から買うしかありません。
コラーゲン(ゼラチン)やビタミンCが、1kg当たり2000円前後であることに比べて極めて高く、有効とされている分量(1日200~900mg×約1カ月)を入れた商品をつくった場合、かなりの高額商品にしなければ儲けは低くなります。
その結果、グルコサミン含有量をパッケージ表示よりも少なくして販売している商品が多くあることが問題視されています。
消費者庁の外郭である独立行政法人 国民生活センター(http://www.kokusen.go.jp)の調査によると、グルコサミン配合をうたったサプリメントの大半で、容器に表示された配合量に遠く及ばない分量しか入っていないことが確認されています。
ひどいモノではパッケージに表示された分量のわずか0.4%、多くても35%という実態が明らかになりました。
しかし、こういった不正をしても、現行法では注意以上の厳しい処分等はありません。医薬品であれば、内容量と表示が異なれば厳しい処分がありますが、食品では行政も「改善するように」としか言えないのです。
医薬品として十分な内容量を配合すると、低価格では販売できないので、ライバル商品に負けてしまいます。そこで不当表示をしても注意を受けるだけで済む健康食品としての販売に終始しているのでしょう。
グルコサミン商品に関しては、「医薬品」と明記されたもの以外は、配合量も信用ならないというのは覚えておくとよいでしょう。
このように、まともに商品を売る気がないメーカーが大半で、効能も期待できず、内容量も信頼できないのがコンドロイチンとグルコサミンの商品です。それでいてCMでは、あたかも関節痛の特効薬といわんばかりのイメージ宣伝をしたり、医薬品のような効能をうたっているのですから極めて悪質な商売です。
(文=へるどくたークラレ/サイエンスライター)