(「Thinkstock」より)
日本の傘の販売は、1年間で一億本を超えており、年間1人1本を購入している計算となる。そしてそのうち、実に7割あまりがビニ傘となっている。安価で使い勝手のいいこれらは、急な雨などの場合、とても重宝する。だが、耐久性に欠け、強い風が吹くとすぐに壊れてしまう一面もある。
そうして、台風の翌日には、“おちょこ状態”になった傘が、路上に多数捨てられているわけだが、ではこれらはいったい誰が片付けているのだろう? そもそもビニ傘の残骸は、可燃ごみなのか? それとも不燃ごみか? 台風の翌日が都合よく該当するゴミの収集日なわけでもないはずだし……と、疑問はわくばかりだ。
さっそく各市区町村の清掃局に問い合わせてみると、どうやら、ビニ傘は、通常のゴミ収集とは異なり「臨時的な対応」として、収集・廃棄しているのが現状のようだ。
例えば新宿清掃事務所では、「駅前や繁華街に散乱している傘のゴミを、通常の収集が終わった後に、手の空いている職員が軽トラックで収集に向かいます。新宿、高田馬場、四谷といったターミナル駅や、歌舞伎町などの繁華街が中心ですね」と話す。
今回の台風17号のように、土日に台風が直撃した際は、外出している人も少なく、傘のゴミも少なくなるという。しかし、平日に台風が直撃すると、通勤・通学などの人が多く、傘のゴミも急増。「これまでで、1日で最大軽トラック1杯分(300kg)の傘のゴミを回収したことがあります」(同)という。やはり、台風直撃による傘のゴミの量は尋常ではない。
では、台風直後に大量発生する傘のゴミに対して、清掃事務所はどのような対策を講じているのだろうか?
「実際、打つ手が無いのが現状です……。一般的なモラルの問題なので、区で何かを行うのは難しいですね。壊れた傘を放置してしまう人には、ごみ収集のための行政コストがかかっているということを、マスコミなどを通じて、積極的に訴えていくしかありません」
年間7000万本程度販売されているビニ傘のうち、廃棄される量は年間5600万本あまりにのぼる。手軽に買える分、壊れたら街中に捨ててしまいがちだが、その行為は、清掃局員を困らせるだけでなく、自分自身の税金が消費されているということで、跳ね返ってきてしまうことも自覚したい。
(文=萩原雄太/かもめマシーン)