確かにアンケートでも「家族として本心から愛していますが、その愛が深まるほど性の対象から離れていく感覚はありました」(30歳・男性・結婚歴8年・子2人)というような男性の回答が多かった。
●必ずしもセックスレスは“悪”ではない
その上で、吉田氏はこう提言する。
「『女として見てくれない』という妻の言葉にはいろいろな意味がありますから、夫は自分の妻がどういう意図でそう言っているか、思っているかを理解する必要があるでしょう。今までの話の流れだと、妻側の考え方が単純に“セックスをしない=女として見てくれない”という一辺倒の論理だけのように感じてしまう男性もいるかもしれませんが、セックスだけが女としてのアイデンティティを確立するものではないと思うのです。例えばセックスレスであっても、日常生活で夫が妻に結婚前と同じように接してあげていれば、妻は女としての価値を軽んじられているとは考えない場合もあるでしょう」
アンケートの中で、夫に不満を抱いていない妻の意見としては、「旦那は大切な存在ですが、正直私も“男”として見られなくなっているので、おあいこかな」(28歳・女性・結婚歴4年・子2人)といった回答もあったが、「出産後のセックスは3カ月に1回程度。でもうちの旦那は毎日ギュッと抱きしめてくれたりキスをしてくれたりするし、2人だけのデートにも誘ってくれるので不満はないです」(32歳・女性・結婚歴10年・子1人)という声も。
「個人的には結婚した相手とは死ぬまで男女の関係でありたい、セックスし続けたいと考えていますが、必ずしも“家族”という共同体においてセックスが必要不可欠というわけではないということです。実際、夜の営みをなくしたってうまくいっている家庭は多いですからね。ですが、やっぱり『3日に1回はセックスしてよ!』とお考えの奥さんもいるでしょうから、旦那さんは奥さんの持っている“女論”といいますか、“女の定義”みたいなものを知る努力をする必要はあるんでしょう。だから一度、セックスについて腹を割って話し合ったほうがいいのでしょうね。言葉にしないと伝わらない気持ちというのはありますので。その上で、『月に1回はやりましょう。手抜きなし、全力で』という夫婦のルールができてもいいですし、『セックスはお互いヨソでやる。ただしバレないようにヤッてくるのが鉄則』というルールができてもいいのではないですか。要するに“ヨソはヨソ、うちはうち”。夫婦の定義は自分たちで決めればいいことなので、メディアに踊らされることなく、夫と妻、個人個人が自分の欲望とその着地点に向き合うことが大切かと」(吉田氏)
現在の日本ではセックスレス夫婦の問題が多様なメディアで取り上げられているが、もし自身がそうであったとしても、過剰に危機感を抱く必要はないのかもしれない。
(文=昌谷大介/A4studio)