スマホ、自由にアプリいじれるガジェット…生誕の地は日本?
その後、80年代半ばに入って学校にたまたま置いてあったApple IIcを初めて触って、BASICを走らせた時には、「文章(プログラム)を書いて勝手に計算してくれるなんて電子ブロックも進んだものだ」と思いました。もう物理的にブロックを組み替えなくても、箱の中の誰かが計算してくれたのです。
●現在のアプリ開発と電子ブロック
そんなことを思い出しながら、現在のアプリ開発に話を戻しますと、サービスにAPIを引っ張ってきて組み合わせたり、サービスとして位置情報とシェア機能を組み合わせたりするのは、DJっぽいというか、まさに電子ブロックの組み合わせを思い出します。そもそもプログラミング、例えばObjective-Cでクラスをつくって利用するのも、ブロックっぽいと思います。
ガリガリとコードを書いている今の20代の方は知らないと思いますが、おそらく電子ブロックを知っている世代には、マサチューセッツ工科大学(MIT)のScratchやApp Inventor、GoogleのBlocklyには胸が躍るものがあったはずです。また「学研電子ブロックfor iPad」にいたっては、元来は物理的な抵抗や回線をブロックの形状にモジュール化してプログラミング可能にした電子ブロックを、本来的にプログラミング可能なコンピュータ上に外形上は表現した上で、外形とはまったく異なった内部のプログラムを走らせることで再現している、となんだか迂遠で混乱したことになっていて面白いです。
iPadで思い出しましたが、いわゆるガラケーはプログラム(アプリ追加)によって機能が変更されることのないハードであるのに対して、スマホはプログラム(アプリ追加によるカスタマイズ)可能なコンピュータだなと感じます。この差は単機能家電とプログラマブルな端末というかたちで、設計思想の違いからまったく異なった製品へと昇華されているように見えます。プログラマブルなデバイス(電子ブロック)の生誕の地にある日本のメーカーが、米国勢に押されているのはちょっと残念です。そういえば1999年にパイオニアは全面液晶ディスプレイの携帯電話を発売しており、日本勢はいろいろと時代に先駆けていたのです。
●プログラマーは契約書作成に向いている?
余談ですが、私はファイナンスのストラクチャーをパワーポイントに落としてシミュレーションの説明をクライアントに行い、それをもとに契約書を作成することをよくやっています。契約書を日常的に作成している方はわかると思いますが、契約書の作成はひな形のストックを使用して、必要な部分(ブロック)を持ってきては組み合わせて、骨組みをつくった上で構成に問題がないか各条項を洗練していくものです。こんな時も電子ブロックやらプログラミングやらを思い出すわけですが、私は常々、コードを書ける理系の人は契約書作成に向いているのではないかと思っています。
私が子供の頃に触った電子ブロックに影響を受けたのと同様に、小さな頃からコードを書いていた子供が大人になった時に、どんな思考プロセスを持つのか? とても興味があります。2013年もいろんな新しいテクノロジーが登場すると思いますが、子供たちから新しいアイディアやテクノロジーが生まれたら面白いです。
皆様、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。本年が皆様にとって楽しい年でありますように。
※本稿は筆者個人の意見であり、所属する団体等の見解ではないことをご了承ください。
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