日本、雇用の喪失が急加速…失業者の受け皿消失、「おもてなし」はスキルではない
コスト削減の強い圧力のなかで狭義のサービス業は、ここ数年、年間100万人規模の生産年齢人口の急激な減少、それによる有効求人倍率の高止まりと採用の困難、人件費の上昇によって、非正規中心モデルの維持にも苦慮している。この状況が続けば、非正規中心モデルから機械化に向かう可能性が高いのではないか。
もし、それが進展すると、狭義のサービス業の失業者吸収力が当然減衰する。むしろ、ICTの革新的進歩によって、これまで失業者を吸収してきた狭義のサービス業から失業者を生むかもしれない。それ以前に、競争についていけない自営業者の廃業が加速化しており、狭義のサービス業のなかからすでに失業者を生んでいる現状も忘れてはならない。
このように捉えると、狭義のサービス業がこれまでのように失業者を吸収する存在であり続けることは望めないであろう。
介護業界
それでは、他の第三次産業は狭義のサービス業にかわって、ICTの革新的進歩による失業者を吸収する受け皿となり得るのであろうか。
電気・ガス業などのような公益的性格の強い資本集約的な産業は、人口減少を踏まえれば、今後このようなインフラ産業は地方から縮小に向かうと捉えるのが普通であり、失業者を吸収する受け皿にはならないであろう。
それでは、教育、医療、金融業のような知識集約的な産業はどうであろうか。そもそも、このような知識集約的な産業では、国家資格認定や高度な知識を必要とするので、付け焼刃の再教育プログラムで大量の失業者を雇用することは不可能であろう。
超高齢化社会に向かうため、確かに介護人材への需要は高まる。政府も今後介護人材が大幅に不足するとしている。介護職は知識集約を前提とする医療職と違い、むしろ対人接客を核とする狭義のサービス業に近いともいえなくはないが、75歳以上の後期高齢者が急速に増加するなかで、介護職にも基礎的な医療知識が求められてくるであろう。加えて、介護職は誰にでもできる仕事ではない。親の介護は仕方がないので行うとしても、お金のためとはいえ、他人の介護は誰にでもできるものではない。
加えて、年金制度に対する不信感が強まるなかで、65歳以上でも働く必要があるという潜在的求職者が増加する可能性も高く、彼らが介護領域に職を求める可能性もあるので、政府のように楽観的に、介護産業がICTの革新的進歩による雇用喪失者の受け皿となると捉えるのは難しいのではないか。