日本、雇用の喪失が急加速…失業者の受け皿消失、「おもてなし」はスキルではない
今回は、これまで職を失った労働者の受け皿となってきた第三次産業(一般的にいわれる広義のサービス業)が今回の状況でも、これまでと同様に、今後ICT(情報通信技術)の革新的進歩によって職を失うであろう労働者の受け皿となり得るかを議論したい。
第一次・第二次・第三次産業という定義の背後には、国が経済発展をしていく過程で、産業構造は第一次から第二次、そして第三次へ移行していくという前提があり、これは「ぺティ=クラークの法則」と呼ばれている。
まず、経済学者コーリン・クラークが定義した産業分類による第三次産業とは何かをみてみたい。
そもそも第三次産業とは、以下のように定義される第一次・第二次産業に含まれない産業を指し、明確な定義はない。
・第一次産業:自然界から原料を採取・生産する産業
例)農林漁・鉱業(日本では第二次産業に分類される)
・第二次産業:第一次産業で採取・生産された原材料をもとに加工・製造し、富(価値)を生み出す産業
例)製造・加工・建設・電気/ガス業(日本では第三次産業に分類される)
第三次産業をあえて定義すれば、有形財(物質)を念頭に置いた第一次・第二次産業に含まれないので、無形財に基礎を置いて価値の創出と分配を行う産業といえよう。
「雑多な」第三次産業
上記定義ゆえに、第三次産業の内容は雑多である。事実、日本における分類でみると、第三次産業とは以下を含み、明らかに成り立ちの異なる産業の集合体であることがわかる。
・電気、ガス業などのような公益的性格の強い資本集約的な産業
・飲食、小売、宿泊、卸売、運輸業のような労働集約的な産業
・教育、医療、金融業のような知識集約的な産業
・最近急速に伸びてきている情報通信産業という技術集約が加わった知識集約的な産業
このような雑多な産業を第三次産業という単一のくくりで単純にとらえることは、産業構造の変化を正確に把握する上では問題があるであろう。そもそも、第一次・第二次産業が縮小し、「その他」であった第三次産業が主流となるなかで多岐化、複雑化し、その過程で価値の源泉が製造や加工から知的財産(無形資産)にシフトしていった。加えて情報通信産業が、第三次産業のみならず、第一次と第二次産業にも大きな影響を与えるなかで、クラークの単純な産業分類で経済活動を社会的観点から議論をすることは限界に達しているといえよう。