それゆえIIJmioは、特にインターネットやテクノロジーに詳しい男性層から支持を得て、人気を高めていった経緯がある。だが一方で、ITに詳しくない人に対してIIJmioの知名度は決して高いといえないし、もともと個人向けより法人向けサービスに強い企業であることから、一般消費者向けに自社のサービスを販売する、強力な販路を持っているわけでもなかった。
そうしたことからIIJは、ほかのMVNOに先駆けて実店舗での販路拡大に積極的に取り組んできた。実際、同社はMVNOが注目を集め始めた2014年に、ビックカメラと協力して即日開通が可能な「BIC SIMカウンター」を展開。MVNOの契約はインターネット経由でするのが当たり前という時代から、実店舗での契約ができる環境整備を進めていたのである。
日本郵便とのカタログ販売も、実店舗展開同様IIJがリアルな場面で消費者とタッチポイントを持つための施策のひとつといえるだろう。確かに、最近ではMVNOが実店舗展開に取り組むケースも増えてきているが、実店舗展開はどうしてもコストがかさんでしまうため、大手キャリアと比べ企業体力が弱いMVNOが単独で全国展開するのは難しい。しかし、その一方で、MVNOの主力の販売手法であるインターネット販売だけでは購入する顧客が限られ、特にインターネットにあまりなじみのない高齢者層などを取り込むのは難しいのも事実だ。
可能な限りコストを抑えながらも、従来とは異なる層の顧客をMVNOのサービスに取り込む上で、全国に販路を持つ大手企業とのパートナーシップは重要な意味を持つ。そして日本郵便は全国くまなく、しかもインターネットに詳しくない層にリーチできる、数少ない販路を持つ企業だ。それだけにIIJが全国の郵便局でカタログ販売を実現したことは、競争上非常に大きなアドバンテージを得たことになるのは確かであろう。
販路拡大でMVNOの競争は新たな段階へ
だがIIJは、強力な販路を獲得したからといって安心できる状況ではない。カタログ販売が拡大した後に、課題となるのはサポートだ。スマホは継続的に料金を支払ってもらうサービスであるため、販売したら終わりではなく、その後のサポートも重要になってくる。だが、郵便局で実施されるのはあくまでカタログ販売のみであり、郵便局がサポート拠点となるわけではない。