カタログ販売を通じて加入するユーザーの多くは、スマホになじみが薄い層と考えられるが、そうした人たちは手厚いサポートを求める可能性が高い。だが、先述した通り、郵便局は「ドコモショップ」「auショップ」のようにサポートまでするわけではないので、サポート面での“駆け込み寺”が存在しないという弱みを抱えてしまう。もちろん、電話やネットでのサポート、さらには出張での有償サポートなども存在するものの、キャリアショップのサービスと比べるとどうしても充実度は低い。それだけに今後は、獲得した顧客をサポートで失望させないための取り組みを強化する必要も出てくるだろう。
また、全国くまなくという面でいうならば、ほかにも強い販路を持ついくつかの企業が、すでにMVNOに参入していることも忘れてはならない。たとえば、イオンリテールは、全国のイオンで自社のMVNOによる通信サービス「イオンモバイル」を販売しているし、レンタル大手のTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブも、傘下のトーンモバイルが提供する「TONE」の販売を、全国のTSUTAYA店舗で進めつつある。
また、ある程度地域は限定されるが、直接的なライバルとなりそうなのが生活インフラ系の事業者だ。昨年、東京ガスが「FREETEL」ブランドでサービスを展開しているMVNOのプラスワン・マーケティングと提携し、格安スマホに参入するとの報道が一部でなされていた。現時点では両社ともに提携の動きは見せていないが、もしこうした動きがエネルギー系企業などに広まっていけば、郵便局に並ぶブランド力と強力な販路、顧客からの強い信頼を持つライバルが現れることになるかもしれない。
今回のIIJの動きは、MVNOがインターネットからリアル、さらに都市部から地方へと広がり、MVNO同士の競争がより熾烈になってきたことを示している。市場の急拡大を背景としてすでに500社以上の企業が参入しているといわれるMVNOだが、販路拡大に結び付けられない事業者は、急速に淘汰されることになるかもしれない。
(文=佐野正弘/ITライター)