iOSとAndroid、スマホOSのシェア99.9%に…「その他」消滅の多大な恩恵
スタートアップ企業の多くは、まずiPhone向けにアプリをつくってビジネスモデルやアイディアを具現化して投資を集め、世界中でユーザー数がもっとも多いAndroid版の開発によって収益化を狙う、という手順が一般的となった。
Androidのデバイスの性能差やバージョンの分断化には考慮しなければならないが、iOSとAndroid向けのアプリをメンテナンスすれば良い点は、開発者にとっての負担が少なく済み、二極化で済んでいる点はむしろ歓迎すべき状況、といえる。
アップルはiPad向けアプリをMacに移植する仕組みを18年6月の開発者会議で発表するとみられている。世界2位のモバイルOS向けに開発したアプリが、そのままパソコン向けのデスクトップアプリに早変わりする仕組みを用意することで、開発者に対してMac向けのアプリ開発を少ない労力で実現し、ユーザーにとってはモバイルとデスクトップの一体的な体験を提供できるように整備を進めていくことになる。
セキュリティ問題は諸刃の剣
開発者にとって有利ともいえるモバイルOSの二極化だが、一方でセキュリティ懸念の拡がりについては多様性の少なさで逃げ場がなくなりつつある。2つのOSに影響のある脆弱性が発生した場合、そしてその脆弱性が公表されないまま悪意のあるハッカーによって活用された場合、世界中の人々のデータが危険にさらされることになるからだ。
一方で、多様性があだとなる可能性もある。これはOSの問題ではなかったが、プロセッサの高速化の仕組みを突いた脆弱性、SpectreとMeltdownは、ハードウェア、ソフトウェア、アプリなどの企業が対策を施さなければならなくなった。
特にメーカーごとにカスタマイズが進むAndroidでは、開発元のグーグルによる対応だけでは脆弱性を回避できない。今後もセキュリティについては、デュオポリー、多様性の両面から神経質な取り組みが続いていくことになるだろう。
パソコン市場を見る通り、デュオポリー状態が決してその業界の発展を妨げるとは考えにくい。WindowsとMacが中心の市場のなかでも、アップルは2007年にMacBook Airをつくり出して超薄型ノートブックで時代を築き、またMicrosoftはSurfaceシリーズによって2-in-1、デタッチャブルという新しいトレンドをつくり出しているからだ。
スマートフォンの販売台数の成長が止まりつつあるなかで、グーグルやアップルが次に、どんなモバイルの世界をつくろうとしているのか、引き続き動向に注目していきたい。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)