半導体市場、「ハイパーサイクル」など存在しなかった…メモリ「バブル」終焉の後先
これを説明するためには、メモリ製品の特徴を理解しておく必要がある。メモリの種類は多いが、大量生産され産業的にインパクトのある製品はDRAMとNANDフラッシュである。DRAMは、パソコンやスマホのなかで一時的にデータを保存するメモリに使われる。スマホのようなコンピュータのなかではメモリ(DRAM)はCPUと絶えずやり取りしており、メモリ容量を増やせば増やすほど、コンピュータは高速になる。フリーズは起きにくくなる。
一方、NANDフラッシュは電源を落としても記憶内容を覚えているため、データを長期的に保存しておく用途に使う。パソコン向けだと、ハードディスクと同じ役割を持つ。スマホではNANDフラッシュの容量が多いほど、音声や動画、写真などのデータをたくさん保存することができる。
さて、表2の黄色で示したメモリメーカーのうち、東芝とウェスタンデジタル(WD)以外は、NANDフラッシュとDRAMの両方を生産している。しかも上位のサムスンとSKハイニクス、マイクロンのDRAMメーカーは、この3社だけで市場の95%以上を占有している。NANDフラッシュは、これらに東芝、WD、インテルも加わるため、比較的シェアは分散している。
DRAMは3社が95%以上のシェア
DRAMを独占する3社は、実は2017年の半導体ブームの時にDRAMの生産量をほとんど増やさなかった。このためパソコンやスマホのメーカーではメモリが不足し、DRAMの単価はどんどん上がっていき、最低値だったときの2倍にも高騰した。2018年第3四半期(7~9月)に入っても値上げは止まらなかった。DRAMメーカーはカルテルを結んでいたわけではないが、3社だけならライバルが値下げしない限り、値上がりを楽しんで待ち続けることができた。供給不足をDRAM3社は知っていながら、DRAMの生産量を増やさずに、NANDフラッシュへの投資を行った。
だが、トップ3社もいつまでも単価の値上がりに期待しているわけにはいかない。顧客から不満が出るからだ。トップ3社のうち、サムスンとハイニクスはライバル意識むき出しの犬猿の仲であり、ハイニクスとしてはいつまでもサムスンの後塵を拝しているわけにはいかない。最初に生産量を増やしたのはハイニクスだ。サムスンを追撃するためだが、サムスンも黙っていない。生産を増強し始めている。その結果、サーバー用DRAMの5%値下がりを韓国のこの2大メーカーが見込んでいるようだ。