「ピクミン ブルーム」大人気の秘密…“戦わない位置ゲー”の斬新な魅力とは?
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2021年第4四半期(10~12月)のアプリ利用動向について聞いた。
「さとふる」アプリの利用者が過去最高に
日影耕造氏(以下、日影) 現在(取材時22年1月中旬)はオミクロン株感染の急拡大が止まらない状況ですが、21年10~12月はコロナの脅威が比較的落ち着いていた時期でもありました。
一昨年の20年末は多くの都道府県知事が外出等の自粛を求めていましたが、昨年末は緩和されていました。それに合わせるように、「Google Map」やJR東海の新幹線予約アプリ「EXアプリ」、JR東日本の新幹線予約アプリ「えきねっと」、東京ディズニーランドのアプリ「Tokyo Disney Resort App」の利用動向は復調傾向でした。
コロナ以外の面で見ていくと、「年末ならでは」のアプリが伸びました。まず一つが、ふるさと納税アプリです。ふるさと納税は年単位の申し込みですから、12月は駆け込み月です。
ふるさと納税はウェブサイトからの申し込みが一般的でしたが、近年はアプリからも増えています。「さとふる」アプリは12月に、アプリ限定で寄付金額の最大6%をPayPayボーナスで実質キャッシュバックするキャンペーンを行い、アプリ利用者が過去最高となりました。こちらが、App Apeによる「さとふる」アプリの月間利用ユーザー推移です。
――20年12月と比較すると、21年12月は倍近くまで増えていますね。令和2年度の総務省資料によると、ふるさと納税を利用して住民税を控除された人は406万人とのことで、年々増加しているものの「条件的にはできるのに、していない」層がまだまだ多数派なことがわかりますね。やらない人の理由として「面倒くさそう」「よくわからない」は大きそうなので、手軽なアプリからふるさと納税利用者が増えるかもしれないですね。
年賀状アプリのメインユーザーは40代女性?
日影 ほかにも、12月ならではのアプリが「年賀状アプリ」ですね。年賀状の発行枚数自体は減っているのですが、「スマホでカラリオ年賀」の利用者は過去最高になりました。
――22年用のお年玉付き年賀はがきの当初発行枚数は、前年より約1億1000万枚(約6%)少ない約18億3000万枚で、00年から半減しています。年賀状を支える高齢世代も「年賀状はこれで最後」と卒業宣言するケースも増えているようです。年賀状が減る中でも、年賀状アプリ利用者は伸びているというのが興味深いです。
日影 アプリ「スマホでカラリオ年賀」の利用者層の年代を見てみると、40代女性が多いですね。
今の40代は子どもの頃から年賀状を出していた世代でもありますし、一方でスマートフォンとの親和性も上の世代よりは高いですから、「年賀状アプリ」との相性が最もいい世代とも言えるかもしれません。
一方、20代以下の利用者は大幅に減ります。これはもともとの世代の母数が40代に比べて少ないというのもありますが、(※筆者注:総務省統計データを見ると、10代110万人に対し、40代は182万人と1.5倍以上)、年賀状との親和性の低さもあるのでしょう。SNSの挨拶などで済ませ、あえて年賀状を送る層はこの世代では多くないかもしれないですね。
ゲームアプリの新機軸「ピクミン ブルーム」
日影 ゲームでは、21年10月26日にリリースされた「Pikmin Bloom(ピクミン ブルーム)」が好発進です。App Ape上の月間利用ユーザー数(MAU)ランキングでも11月が7位、12月は9位です。ゲームのMAUは長期運営アプリが独占しがちなので、リリース間もないゲームがここまでくるのは大健闘といっていいでしょう。
「ピクミン ブルーム」の新しさは「戦わない位置ゲー(位置ゲーム:スマートフォンの位置登録情報を活用したゲーム)」ということですね。従来型の位置ゲーである「ポケモンGO」「ドラゴンクエストウォーク」にしても戦う要素があるのですが、「ピクミン ブルーム」の場合は、育てる、愛でる、一緒に暮らすゲームです。「モンスターを集めて、倒して楽しい」とは、また別の要素なんですね。
――「戦って」系だと反射神経であったり攻略法であったりとか、あれこれ考えたりスキルがないと楽しめないため、やり込みたい人にはいいでしょうが、なじみがない人だと敷居を高く感じる、というのはありますよね。
日影 「ピクミン ブルーム」は裾野が広く、ゆるく、どの世代にも刺さりやすいでしょうね。また、ゲームとしてのおもしろさ以外に、ライフログ的な機能も充実しているんです。
従来型の「戦う位置ゲー」のように、移動中にモンスターに遭遇したり、モンスターを探す、ということはないのですが、歩いた軌跡に応じて「ピクミン」が増えていきます。そして、毎日の軌跡が地図上で見られるんですね。さらに、そこに今日の気分はどうだったか、ランクをつけたり、その日スマホのカメラで撮影した写真と連携することもできるんです。
――スマホって思い出が詰まっていますよね。歩数計を見たり、撮影した写真のアルバムをなんとなく眺めるだけでも楽しいものですが、歩いた軌跡で「ピクミン」が増え、それが1日ごとにきれいにまとめられていると、確かに使いたくなります。うまいやり方ですね。
日影 こうした取り組みは継続利用につながりやすいんですね。事実、App Apeを見ると、休眠ユーザーが少なく、8割がアクティブユーザーです。
位置ゲーは「ポケモンGO」や「ドラゴンクエストウォーク」などヒット作もあるのですが、「ポケモンGO」を共同開発したナイアンティックが制作した「ハリー・ポッター:魔法同盟」も22年1月31日にサービスを終了するなど、苦戦を強いられるものも多いです。今後、「ピクミン ブルーム」が「戦わない位置ゲー」として、どう独自の立ち位置を築いていくかは注目したいですね。
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後編も引き続き日影氏に話をうかがう。テーマは、前澤友作氏の宇宙からのお金配りにおいてダウンロード必須だったアプリ「kifutown」について。
(構成=石徹白未亜/ライター)
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