前澤友作氏の「宇宙からお金配り」にはどういう人が応募したのか?意外な実態
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
前編に続き、同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2021年第4四半期(10~12月)のアプリ利用動向について聞いた。
「宇宙からお金配り」応募者は40代がメイン?
――21年10~12月は、コロナ関係の暗いニュースの中で、明るいニュースとして前澤友作氏が12月8日から20日まで宇宙に行っていましたね。
日影耕造氏(以下、日影) このときに「前澤友作 全員お金贈りfrom宇宙」キャンペーンが行われました。前澤氏は以前からお金配りを行っていますが、今回は外れなしでした。そして、参加するには前澤氏が株主の「ARIGATOBANK」が手がける寄付アプリ「kifutown」のインストールが必要でした。寄付をしてほしい人と寄付をしたい人をつなぐ、プラットフォームアプリです。こちらが、「kifutown」のApp Apeの日間利用ユーザー数の推移です。
前澤氏のお金配りが終わった後も、以前に比べると日々のユーザー数が3~4倍増えていることがわかります。
――前澤氏はツイッターで宇宙から、キャンペーンの参加者が1000万人を超えたと報告していましたね。
日影 アプリを利用してもらうために特典を盛り込んだサービスを行う事業者は多いですが、「キャンペーン実施時は利用者数が跳ね上がるが、その後は元通り」というケースも多いです。しかし、「kifutown」は「元通り」にはなっていないところに着目したいですね。こちらが「kifutown」ユーザーの性年代比です。
――40代が多いのですね。もっと若い人が多いのかと思っていました。また、どの世代もまんべんなく使われているのも印象的です。本連載では、さまざまな旬のアプリのユーザー性年代比を見てきましたが、こんなに「どの世代もまんべんない」感じを受けるのは初めてかもしれません。
日影 40代はもともとの人口が多い世代でもありますし(※筆者注:40代の人口は20代の1.5倍弱)、さらに「スマホ人口」という意味でも一番多いと思われる世代です。これより上の世代になると、人口は増えますが、スマホを持っていない方や、持っていてもあまり使わない方も増えてきますからね。
「kifutown」の性年代比は、スマホを使いこなしている人口比にほぼ合致した形になっているのかな、と思います。良い意味で、どの世代にも刺さる「お金」というコンテンツの強さを感じます。
――「kifutown」の機能が使いたくてインストールしたのであり、前澤氏のお金配りには応募しなかった、という人も中にはいるのでしょうけれど、かなり少数派であり、おおむねこの性年代の方たちが応募したのだろうなと推測されます。
「お金配り」を利用した詐欺被害も多発
「kifutown」の利用者を、おおむね前澤氏のお金配りに応募した人、と見ると、40代が多かったが、仮にこれが前澤氏ではない、全然聞いたことのない人のお金配りであったら、40代の応募者は激減するのではないかと思う。怪しいからだ。
現に、お金配りを利用した詐欺被害はあとを絶たない。20年3月放送のNHK『クローズアップ現代+』では、SNSでのお金配り(前澤氏が手がけたものではない)について、お金を配るどころか「高額な情報商材へ勧誘する」「お金を振り込むには○○手数料が必要、と逆に金銭を騙し取る」「こういった情報につられてしまう、いわゆる“情弱”な人をツイッターからLINEに誘導、そのLINEのアカウントを転売(複数のSNSをまたぐため、SNS事業者が対処できない)」といったケースを報じていた。
心配なのは若年層だ。40代の場合は「前澤氏のお金配りなら応募するが、それ以外のどこの馬の骨かわからない人のお金配りには応募しない」という分別のある人がほとんどだと思う。若年層でも分別のある人の方が多いとは思うものの、「フォローする程度なら大丈夫だろう」であったり、またこれは若年層にありがちだが「友達(会ったことのないネット上のフォロイー、フォロワーなども含む)もフォローしてるから大丈夫だろう」と周りにつられ甘く考えてしまう比率は、中年層より増えるのではないだろうか。
そして、若年層よりさらに心配なのは、病気や障害により、本人に分別のついた判断を求めるのが難しいケースだ。全国社会福祉協議会のパンフレット「高齢者・障害者を悪徳商法の被害からまもるために」には、「被害に遭われた人々は、病気や障害の特性から、自分から被害を訴えることができなかったり、他者に助けを求められなかったり、さらに被害そのものの自覚さえないことも見うけられます」と非常に重たい記述がある。
詐欺の手口を見て、「こんな手口に騙されてしまうなんて」と思ったことのある人は多いと思うし、私もそう思っていたが、さまざまな詐欺被害者手記などを読んで考えが変わった。「こんな手口に騙されてしまう精神状態にある人が社会には想像以上に多いから、悪質な詐欺はあとを絶たない」と、今は思っている。そういう境遇にある人に対して「騙される方が悪い」「自己責任」は酷だ。
内閣府の調査では、知的障害者は108万2000人、精神障害者は392万4000人とあり、さらに厚生労働省の推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症患者の人数は約602万人とされている。また、これらの枠には入らない「グレーゾーン」のケースを入れると、数はさらに膨れ上がるだろう。
認知症の進んだ高齢者にスマホを持たせる人はいないとは思うが、若年層で軽度の知的、精神障害を持つ人の場合が難しいように思える。スマホはライフラインであり、文化的に生きるための必須品であり、「持たせなければいい」もなかなか難しい。
なお、前澤氏は前述の『クローズアップ現代+』のお金配り特集について、ツイッターで「取材依頼来なかったなー。。。危険な方だけ報じるのはフェアじゃないような」とつぶやいている。
(構成=石徹白未亜/ライター)
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