実際に、脳波を利用して適切な音量にする補聴器をパナソニックヘルスケアが販売するなど、脳波センサー技術は、医療の分野に広がりを見せつつある。
政吉氏いわく「現状でも、医療の現場で山積する問題のいくつかを、脳波センサー技術で解決できる」とのこと。
例えば、てんかん患者の場合。当然ながら病気の進行具合は患者それぞれで異なる。できる限り綿密な症状の把握が必要であるのだが、その症状を測り知るためには、かなり高度な医療用脳波計を必要とする。だが、その機械は一体につき400〜500万円と高額で、多くの病院に十分に備わっているものではない。結果として、患者はひと月に一度程度しか検査を行えないという状況に追いやられている。
このような状況を打破するため、B-Bridgeは単極型の簡易型脳波測定ツールを開発中だ。このツールを使えば、自宅で患者の病気の進行状況などを測ることができる。
また同社は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者のコミュニケーションツールとして、このツールを利用することを考えている。ALSは筋肉が次第に動かなくなっていく病気だ。表情筋なども動かせなくなるため、多くの場合、家族や友人、ヘルパーなど身の回りの人とのコミュニケーションが取れなくなってしまう。
「看病する家族やヘルパーの方は、実は患者と同じぐらい孤独に苛まれている。いくら看病しても、患者とコミュニケーションが取れなければ、感謝されているかどうかもわからない。そんな時に脳波センサーを使えば、患者との簡易的なコミュニケーションは可能になる。感謝の気持ちだって伝えられる。それによって、看病する側の家族やヘルパーさんのモチベーションがぐんと上がるのです」(政吉氏)
あらゆる場面を想定して研究が進められている脳波センサー技術だが、まずは医療現場など、ニーズの高い分野での進展が期待されていることは間違いなさそうだ。
今後の同業界に引き続き注目したい。
(文=高橋大樹/デファクトコミュニケーションズ代表)