●ナビゲーション利用のリスク
別の角度からGoogle Glassを活用しているのは、国内最大手の地図制作会社ゼンリンだ。Google Glass を装着すると、設定した目的地までのガイドが視界に浮かび上がる。特に自転車向けのナビゲーションサービスは、かなり実用的だ。スマートフォン(スマホ)などでは、端末を手に持って自転車に乗るのは危険なため利用しづらい。しかし、メガネのように身に着けて使用できれば危険は減らせるだろう。
ちなみに、同様のサービスが自動車向けに展開される予定はあるのか、ゼンリンの担当者に聞いてみたところ、「現時点では自動車向けとして提供する予定はない」という。Google Glassに表示された情報を見ている状態から現実世界に目の焦点を合わせるには、わずかに時間がかかるため、その誤差によって事故の危険が生じるとの理由で、自動車向けのサービス展開には消極的らしい。
この焦点の移動に時間がかかる問題はGoogle Glassに限らず、スマートグラス全般の問題である。これを解決しなければ、高速で移動する乗り物のナビゲーションをスマートグラスで行うのは難しいだろう。
●高い実用性と、今後の課題
Google Glassの基本的なユーザインターフェースとしては、音声認識を利用する。例えば、内蔵のカメラ機能で写真を撮影する場合、「写真撮って」などと音声で指示を与える。しかし、近くにGoogle Glassをかけた人が複数いる状況で、同時に「写真撮って」と叫ぶようなことがあると混乱が予想されるが、これはBluetooth接続したスマホで操作するなど、簡単に解決される問題だろう。
多少の改善点はあるにしても、音声による指示で撮影ができる機能は、両手がふさがっているようなシーン、例えばジョギングやサイクリングをしている時でも動画撮影ができるなど、多くのメリットが考えられる。
Google Glassには、装着における物理的な問題もある。平常時にメガネを使用していない人であれば問題ないが、メガネとGoogle Glassを併用する場合、うまく固定することができない。実は、この問題についてはグーグルも認めており、実際に市販品ではメガネフレームにGoogle Glassを固定したモデルも販売されることになっている。
気になるのは長時間、Google Glassを使用する場合の目の疲労だ。短時間の試用では、どの程度疲労がたまるのかはわからない。
現状のGoogle Glassや関連サービスを見ると、多少の問題点はあるが、周囲の映像から自動的にデータを表示したり、ナビゲーションするなどの用途で、かなりの実用性がありそうだ。
それにしても、自動認識してデータを表示するサービスが普及すれば、今後、人間はものを覚えなくなっていくかもしれない。
(文=一条真人/フリーライター)