Facebook、Twitter…SNSは人々を幸せにしたか?
ベンチャーで成功するか否かは、経営陣が鍵を握るものです。「ソーシャルランチ」のビジネスフレームを最初に聞いた時は、
「なんでランチなの?」
「なんで、ランチをするのはペア同士というスキームなの?」
という質問をしたのですが、聞けば聞くほど、よくできているなと思いました。
「ランチはみんな食べるし、でもディナーではなく、しかもペアなので、女性でもあまり危険なことにはならない。値段もランチだと手頃ですよね」
と、なかなか微妙なところを突いている。加えて対象者数は非常に多い。都市部にいるビジネスマンを中心に、大学生なんかも含まれています。「非常に面白い線を突いているな。これは気付かなかったなぁ」という驚きですね。
ミッションステートメントをストイックに守る
――創業時に、ベンチャー企業が注意すべきことはなんでしょうか?
照沼 今は小さい規模で起業する「リーンスタートアップ」という言葉もはやっていますが、創業時に決めたミッションステートメント(会社の行動指針)から逸脱しないために、ビジネスの再現性が確認できるまで、資金をぎゅっと絞って集中していくことが重要です。ソーシャルランチでも、「同社のシステムをプラットフォームとして活用させてほしい」というお話が、ある有力企業からあったそうです。
でも彼らは、そのオファーを断りました。理由は、ランチとは関係なかったからです。いい話、いい相手先だったらしいのですが、プラットフォームとして提供するということは、付随する受託開発業務も請け負うことになる。それは、「新しい昼の文化を創出する」というミッションステートメントから逸脱しかねないことなのです。それで、今はやめようということになったそうです。
この判断は正しいと思います。会社が大きくなって、利益がついてきてそろそろという段階、1本足打法から2本足打法に移行できる時期が来たらやるべきだと思います。しかし、事業というのはどうしてもS字カーブを描きますので、成果が数字に現れ難い時期に本業ではないことに手を出し、それが妙に認められたことからワクワクしてしまって、創業事業に集中すべき時期にミッションステートメントを逸脱してしまい、その結果、本業を見失ってしまう企業をたくさん見てきました。その点でも「ソーシャルランチ」のように、本業に立ち戻ってストイックに経営していくことは大切ですね。
起業家の趣味で終わっていないか?
――今後、IT分野で大きなビジネスチャンスを持っているのは、どのような分野だとお考えでしょうか?
照沼 試行錯誤中というのが正直なところです。SNSも広義の概念でいえば、今お金になっているのは、ソーシャルゲーム業界くらいですよね。ゲームは最初の2週間ほどで多くのユーザーを確保できないと、後になっても売れないというような法則が見えています。コンプガチャ問題がどうなるかというところですが、プラットフォーム上で、「こういうかたちでトランザクションなりユーザーなりが動いていかないと、あとはもう売れないゲームだ」というモデルができています。しかし、それ以外は、断言できるようなことはないようですね。
最終的には数は力ではないですが、Facebookも世界では9〜10億ユーザーを集めています。そこまでいくと、完全なプラットフォームになる。しかし、それ以外ではユーザー数で見ても、Facebookと対等に渡り合えるSNS事業者はいない。これからだと思いますね。