「子どもたちにも、『何かあったら逃げなさい』と普段から教えておくべきでしょう。『ランドセルは親に買ってもらった大事なものですけど、命のほうがずっと大事だから、逃げる時はランドセルなどは犯人のほうに放り投げて逃げなさい』と教えるべきです。子どもにとってはランドセルを背負ったまま逃げるのは、けっこう大変なんですね。『ランドセルは捨ててきなさい。それは悪いことじゃない。自分が助かることがお父さんお母さんも喜ぶことだから』っていうのは、日頃から言っておいてもらいたい。
子どもはまだ、何を優先すべきかという判断が十分ではないので、とにかく『あなたが元気に帰ることが一番なんだから』というのを日頃から言っておくのは大事ですね。意識づけのために、助けを求めるときの声を出す練習などをゲーム感覚でするのもいいと思います。ただし、通り魔役をしたててシミュレーション練習するというようなことは、やめたほうがいいでしょう。なかにはそれで、トラウマになってしまう子どももいるからです。逃げるということでは、奥さんや恋人といた場合の男性の対応法を言いましたけど、その場合、女性はひたすら逃げてください。対応している男性のところに戻っても何かできるわけじゃないから、せっかくの努力を無にすることになってしまいます。ひたすら逃げて110番通報してください」
通り魔に出会う確率はきわめて低くても、出会ったときの対応はとっさには思いつかない。万一のために、普段から心の準備が必要だ。
「防犯対策の1つとして、女性がやむを得ず暗い夜道を歩くときには、スマホの明かりをつけて手に持ち、いつでも電話できる状態であることが見てわかるようにしておくということがあります。
そういうスマホの使い方はあるものの、普段、いわゆる歩きスマホとか、電車の中でスマホのゲームに没頭してしまうということは避けるべきでしょう。また、ポータブルオーディオプレーヤーからイヤホンやヘッドホンで音楽を聴くという行為も、やめたほうがいいでしょう。通勤時間くらいは音楽を聴いて過ごしたいという気持ちはわかりますが、周りで異常な状況が起きても気づきにくくなってしまいます。これは、通り魔でなくとも言えることです」
逃げることが第一。もしも遭遇したときの準備はしておいても、その際に蛮勇に走ってはいけない。通り魔への対処法は、人生の危機への対処にも通じるかもしれない。
(文=深笛義也/ライター)