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熊谷充晃「歴史の大誤解」

デタラメだらけの新選組!「鉄の結束と戒律」、劇的なドラマはウソ?

文=熊谷充晃/歴史探究家
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デタラメだらけの新選組!「鉄の結束と戒律」、劇的なドラマはウソ?の画像1新選組の土方歳三(「Wikipedia」より/H5ra9y)
 幕末ファンを中心に根強い人気を誇る、新選組。局長の近藤勇を筆頭に、副長の土方歳三、現代ではアイドル的な扱いで人気ナンバーワンの沖田総司をはじめ、大ヒット漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(集英社)の影響からか、斎藤一の人気もかなり高い。

 これらの多士済々なメンバーが、まさに「『漢』と書いて『オトコ』と読む」世界を繰り広げる新選組は、波乱に満ちたグループとして有名だ。

 その新選組を厳しく統制していたのは、鉄の戒律ともいうべき「局中法度」だ。

 入隊した以上は厳守が義務付けられた、新選組の憲法のようなもので、5カ条から成る。なかでも、第1条に掲げられた「士道に背くまじきこと」は有名だ。仲間を裏切ったり、法度に背けば、容赦ない制裁が待っている――。新選組には、そういったイメージも強い。

 しかし、局中法度そのものが、どうやら眉唾もののようだ。

 激動の時代、儚い生涯を駆け抜けたといえる新選組には、明文化された規則は存在しなかった。実際に、そういった規則の存在を裏付ける史料は発見されていない。

 明治時代の終わり頃には、新選組の生き残りであった永倉新八が貴重な証言をしている。北海道の地方紙が永倉の所在を突き止め、インタビュー記事を掲載したのだ。

 記事に掲載された永倉の証言には、局中法度という名前そのものが出てこない。また、永倉は「禁令」という表現をしているが、「4カ条の禁令」となっており、前述した5カ条よりひとつ少ない。さらに、「状況に即応できるように、内容が改められていた」と証言している。

「裏切り者は成敗」もウソ?

 時はたち、時代は昭和に入る。

 新選組をテーマに小説の執筆を考えていた、ある新聞記者がいた。後に数多くの傑作歴史小説を世に出す、子母澤寛(しもざわかん)だ。彼は1928年の『新選組始末記』(万里閣書房)を皮切りに「新選組三部作」を発表するが、そこに書かれていたのが、5カ条から成る局中法度だった。

 どうやら、子母澤が物語を盛り上げるために、局中法度に「私闘を許さず」という新たな文言を盛り込んだようだ。つまり、「5カ条の局中法度」は、フィクションの可能性が高いということである。

 仮にそうだとしても、子母澤はあくまで「小説」を書いたのだから、創作することになんの問題もない。永倉の証言を参考にはしていると思うが、それをベースにドキュメンタリーを書こうとしたわけではないのだ。

 これを、後進の人気歴史小説家、例えば司馬遼太郎や池波正太郎といった面々が、次々と作中に拝借した。子母澤の「創作」が、いかにドラマチックな展開に不可欠な要素だったのかがわかる。そして、後進による力作もベストセラーとなり、局中法度の名称と共に「私闘~」を含めた5カ条が、さも事実であるかのように世の中に広まっていったのだ。

 また、「脱隊は決して許すまじ」「裏切り者は成敗する」といった、新選組を特徴づけるストイックなイメージも、事実と違っていたようだ。

 新選組が内ゲバともいえる粛清劇を披露したのは、芹沢鴨や伊東甲子太郎一派を相手にした時ぐらいである。何も「地の果てまで追いかける」といったこともなかったようで、脱隊後も生をまっとうした人間も、少なからず存在している。

 それも当然で、局中法度が空想の産物なのであれば、それを規範に実施されたといわれるドラマチックな出来事も、その真偽は危ういものだ。

 フィクションが事実のように扱われ、世間的に定着してしまうことは、よくある。絶大な人気を誇る新選組にも、そういった側面があるということだ。
(文=熊谷充晃/歴史探究家)

熊谷充晃/歴史探究家

熊谷充晃/歴史探究家

1970 年神奈川県生まれ。フリーライター。歴史探究家。近著は『教科書には載っていない! 戦争の発明』(彩図社)、『幕末明治動乱「文」の時代の女たち』(双葉社)、『テレビではいまだに言えない昭和・明治の「真実」』(遊タイム出版)、『世界文化遺産富岡製糸場と明治のニッポン』(WAVE出版)。週刊誌専属記者などを経て2005 年から著述家に。歴史全般のほか社会時事、スポーツ、芸能、ペットなど、ジャンルにより複数のペンネームを使い分けて活動し、自著は現在30 冊近く。また、企業の公式サイトやフリーペーパーなど多岐にわたるメディアで執筆している。

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