日韓共に「WTO勝訴」主張、日本勝訴と考えるのが自然…韓国政府、発表で是正勧告に触れず
9月11日(ジュネーブ時間では9月10日)、WTO(世界貿易機関)の上級委員会は、韓国による日本製空気圧伝送用バルブに対するアンチダンピング課税措置について報告書を公表した。これを受けて日本政府は、上級委員会は日本の核となる主張を認め、韓国の措置の是正を勧告したことをHPや会見で報告した。「勝訴」という文言は用いていないが、勝訴を宣言したわけである。
この案件については韓国政府も同時に勝訴を宣言している。韓国政府は、多くの実質的争点で、韓国のアンチダンピング課税措置がアンチダンピング協定に違反していることが立証されなかったと判定されたことから、勝訴したと宣言している。結論を先に示せば、韓国側に措置を是正する義務が発生し、履行しない場合は日本が対抗措置を講ずることができるといった点では、日本が勝訴したといえるだろう。
要点は、措置の是正が勧告されたか
さて、両国が勝訴を宣言したこの案件、一体どのようなものなのだろうか。発端は2015年8月、韓国が日本製空気圧伝送用バルブに対してアンチダンピング課税を賦課したことである。空気圧伝送用バルブとは、圧縮空気の流れを制御する部品である。この部品により圧縮空気を利用して空圧シリンダーなどを動かすことができ、自動車、半導体、一般機械などの組立装置などに必要な部品である。
韓国政府は、空気圧伝送用バルブの輸出に関連して、正常価格より安い価格で輸出されている、すなわちダンピングを行っていると認定した。その結果、日本企業3社、具体的には、SMCに11.66%、CKDおよび豊興工業にはそれぞれ22.77%のアンチダンピング課税を賦課した。これに対して日本は、韓国の措置はアンチダンピング協定に違反しているとして、WTOの紛争解決手続に沿った動きを起こした。
まず、日本政府は2016年3月に二国間協議を要請し、実質的な提訴を行った。そして同年7月にWTO紛争解決手続の一審に当たる紛争処理小委員会が設置、2018年3月に報告書が公表され、韓国に対して是正勧告がなされた。日本は一部の論点で日本の主張が認められないとして最終審に当たる上級委員会へ上訴、韓国も同様に上訴し、今回の上級委員会での判断が下った。
日本は、韓国のアンチダンピング課税措置について、損害や因果関係の認定、手続きの透明性などに問題があるため、アンチダンピング協定に違反すると主張した。上級委員会の報告では、小委員会報告と同様、日本が挙げた争点について主張がすべて認められたわけではないが、再度、韓国に対して措置を是正するよう勧告がなされた。