ところが公安関係者によれば、その数は今後、さらに増えていく恐れがあるという。
「これまでに拘束されたと報道されている4人の日本人は、すべて公安調査庁(公安庁)が中国情報を収集するために派遣した人物。大手マスコミは、彼らが『情報収集を依頼された』としか報じていないが、実際のところは公安庁が写真撮影の仕方や、連絡、非常時の対処を“訓練”して派遣した。
公安庁は、彼らが『訓練しているから当庁との関係は口を割らない』と楽観視しているようだが、甘すぎる。逮捕から起訴まで最長で23日間しかない日本でも、ほとんどの被疑者はその間に自白する。それだけ取り調べは過酷ということだ。拷問をしない日本でこうなのだから、拷問を厭わないといわれる中国で4カ月も拘束されていれば、すべてを自白しているとみるのが当然だ。
公安庁はひた隠しにしているが、ほかにも中国で日本人が拘束されていると聞いている。彼らは、中国の情報ではなく北朝鮮の情報を収集するために中朝国境に派遣された人たちだといわれている」(公安関係者)
実は、中国で日本人が拘束されるのは、今に始まったことではない。2002年と08年には防衛省から在中国日本大使館に派遣された防衛駐在官が、10年には遺棄化学兵器処理事業に従事していた準大手ゼネコン、フジタ社員4人が、同じく拘束されている。
防衛駐在官(駐在武官)は各国が相互に派遣している外交官の身分を有する合法的なスパイで、行動が監視されているのは織り込み済みだった。対して、フジタ社員の拘束は、同じ年に起こった尖閣諸島沖において海上保安庁巡視船に中国漁船が衝突した事件で、日本側が船長を拘束したことに対する当てつけだ。
公安庁から情報漏洩か
しかし、今回の拘束事件と、こうした過去の拘束事件とでは、「拘束されるに至った理由がまったく異なる」と、公安関係者は続ける。
「最も疑われるのは、情報漏れだろう。拘束されたうちの3人は、公安庁の関東局、中部局がそれぞれ別々に派遣した人物で、局同士、派遣された者同士には、いずれも横のつながりがまったくなかった。それにもかかわらず、一斉に捕まったということは、彼らが派遣されているという情報がどこかから漏れていた可能性がある。最初に捕まった人は、ほかの派遣者を知らなかったわけだから、取り調べでもしゃべりようがない。そうなると、すべてを把握していた公安庁本庁の『協力者』を管理する部署から漏れたと考えるのが妥当だろう」(同)
こうした公安庁の“脇の甘さ”は、以前から指摘されていた。
「1999年に、公安庁の指示で北朝鮮を訪問した元新聞記者が拘束された際にも、その元記者が同庁に報告した資料がすべて北朝鮮に漏れていた、ということが発覚しています。また、01年の北朝鮮不審船事件で工作員が持っていた携帯電話に、公安調査官の電話番号が入っていたこともありました。最近では、今年3月にオウム真理教から分派した『ひかりの輪』に立入検査の日程を漏らすなど、情報管理の杜撰さが以前から指摘されています。拘束された方々は気の毒としかいえませんが、公安庁は情報機関を気取らずに、本来の規制官庁に戻ったほうがいいでしょう」(新聞記者)
過去には、中国で拘束された韓国人活動家が睡眠を6日間禁止され、体に電流を流された挙句に、手枷をはめられ身動きが取れない状態で放置されたという話もあり、その拷問の卑劣さは想像を絶する。
日本人拘束事件について、公安庁は知らぬ存ぜぬを決め込んでいるが、その関係が各方面から指摘されている今、政府は真実を明らかにすると共に、彼らの帰国に全力を尽くすべきではないだろうか。
(文=編集部)