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横浜・偽装マンション傾斜、住民は「いくら」請求できる?建替えは「無理」?

文=山岸純/弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP・パートナー弁護士
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 そこで、3つ目として、「担保責任」を追及することが考えられます。これは、マンション購入契約において、その購入の対象であるマンションに「瑕疵」があった場合には、売り主である三井に「故意」や「過失」があったかどうかは関係なく損害を賠償しなければならない、という制度です。

 したがって、マンション住民は、面倒な「故意」「過失」を立証することなく損害賠償責任を追及することができることになります。

建替え決議には5分の4の賛成が必要

 おそらく、三井はこのようなことを熟知しているからこそ、または専門家の法的アドバイスを受けて、報道されているように「しっかりと建替えをします。その間のホテル代などは負担します」などと発表しているのでしょう。

 確かに、三井にとっては、数百世帯分の損害賠償金を払うより、マンションの建替え費用を捻出したほうが「安い」のかもしれません。それに、三井としては今回の事件の張本人と目される旭化成建材や施工主である三井住友建設に対し、容易に責任追及できるので、「マンションの建替え費用」を転嫁することもできそうです。

 しかし、そう簡単にはいかないのが分譲マンションです。分譲マンションの場合、マンション居住者一人ひとりがそれぞれの部屋の「所有者」ですので、「マンションの建替え」という、自分たちの財産と生活を激変させるドラスティックな出来事を行うかどうかについて、賛成・反対をする権利があります。

 そして、いわゆるマンション法と呼ばれる建物の区分所有等に関する法律では、マンションの建替えを行う場合、「所有者(且つ議決権者)」の実に「5分の4以上の賛成」が必要となります。湾岸地域のとあるマンションにてしばしば理事長を務めている筆者としては、この「5分の4以上の賛成」というのは、かなり難しいことであると思います。

 なぜなら、毎月の管理費を、例えば「共用廊下の電球をLEDに換える費用に使います」といった決議と異なり、「マンションの建替え」はマンション住民一人ひとりにとって、“一生に一度の買い物”といわれる財産(マンション)を失うかどうか、引っ越しをするかどうか、残った住宅ローンをどうするか、という人生の大きな問題となるからです。

 今回の問題となっている大型マンションの場合、おそらく数百世帯が「所有権」を持っているでしょうから、一人ひとり思惑が異なるでしょうし、いくら三井が音頭をとって「しっかりと建替えをします。その間のホテル代などは負担します」と言ったところで、「5分の4以上の賛成」を得るのは、ほぼ不可能でしょう。

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