温暖化の原因についても、経済活動で人為的に排出されたCO2だけでなく、それ以外の要因も大きく、実はよくわかっていない。人為的CO2による温暖化が起きたとされるのは1950年以降だが、それ以前にも地球は結構な速さで温暖化していた。海洋の内部変動や、太陽磁場の変動が大きな因子かもしれないという。
ここまでの話だけでも、国連やグレタさんら環境活動家の主張に疑問符が付くには十分だろう。
CO2を削減するコスト
しかし、さらに重大なのは次の問題点である。それはCO2を削減する政策のコストだ。
グレタさんは、10年間で温室効果ガスの排出量を半減するというよくある考え方では気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性が50%しかなく、人類が制御できない不可逆的な連鎖反応を引き起こす恐れがあると主張。さらに踏み込んだ対策を求めた。けれどもこれだけでは、そうした対策を採るべきかどうかは判断できない。なぜなら、どんな政策にもコストが付きものだからだ。
考えなければならないのは、かりに彼女の提案する政策を実行した場合、コストを上回るメリットがあるかどうかである。ここで言うコストとは、単なる金銭的費用だけではない。政策を実施した結果、失われる利便や恩恵を含む。経済学で言う「機会費用」だ。
グレタさんは、大人たちが話すのは「お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり」と非難した。けれども、もし大規模な温暖化対策によって経済成長が妨げられ、その結果、世界で何億人もの人々が清潔な水や安全な住居を失うようなことになれば、それは「おとぎ話」ではなく、現実の悪夢である。きわめて大きなコストであるのはいうまでもない。
産業革命以降、石炭や石油などの化石燃料で供給されてきた安価なエネルギーのメリットは明らかだ。「人々は苦しんでいます。人々は死んでいます」というグレタさんの演説とは裏腹に、世界で人の寿命は伸びているし、特に途上国では今後も大きな改善が見込まれている。乳幼児死亡率は低下が続いている。安い電力のおかげで洗濯機が普及し、中産階級の女性は洗濯から解放された。
もちろん人間の生活水準が向上した原因は経済成長だけではない。それでも経済成長が大きな要因であることは間違いない。もし厳しい温暖化対策で経済成長が阻害されれば、そのマイナスの影響は小さくない。とりわけ途上国の人々は深刻な打撃を被るだろう。