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中国経済崩壊説のまやかし 安定期に突入、中国政府と市場の「強い実力」

文=井上隆一郎/東京都市大学都市生活学部教授
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中国自動車市場にはびこる弱気

 地方政府の過剰投資と不良債務問題の広がりを受け、また経済成長の急激な減速もあり、中国経済に対する悲観論が高まっている。人によっては不動産バブルや株式バブルの崩壊により、いずれ中国経済に大変な事態が起こるだろうという予測を述べる人もいる。このような極論の背景には、ここのところの南シナ海や東シナ海での膨張的海洋進出への反発もあり、「そらみたことか」と思い切り溜飲を下げたいという心理も働くのだろう。

 たしかに、足元の中国自動車市場はあまりよくない。一時は「いずれは4000万台だ。いや5000万台だ」とにぎやかだった声もすっかり影を潜め、「数年後には2000万台の水準の維持が難しい」という声すら聞こえてくる。しかし本当だろうか。

市場構造を分析

 工場出荷ベースなので、必ずしも市場、需要動向を反映していないデータだが、横並びに全部が全部悪いわけではない。第一に車種を見ると、セダン、微型VAN(五菱など軽キャブバン派生車種)、商用車はとても悪い状況だが、SUVはとても売れている。その結果でもあるが、国籍別ブランドを見ると、韓国系はひところの勢いがすっかりなくなり、むしろ大苦戦中であり、逆に民族系と日系はそれほど悪くはない。

 セダンについてはあまり強い需要が認められないが、SUVに対する需要は強まりこそすれ、弱まる気配はない。8月に筆者が長春周辺の工場を視察した時、4ドアセダンが工場周辺の空き地に在庫として大量に置かれていたのが印象に残った。これは、セダン需要は政府監視の強化から法人需要をはじめとして急ブレーキがかかっていることを示しているということだろう。

 つまり、SUV、民族系の車種はまだ強い需要があることを観察すると、依然として個人需要は根強いものがあるといえよう。

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今回の経済調整期の性格をどう見るか

 中国経済が調整期に入っていることは誰の目にも明らかである。しかし、問題はこの調整期の性格である。不動産バブルの崩壊から、日本のバブル崩壊とイメージを重ねて長期停滞の始まりととらえることも可能だが、結論からいうと、それはまったくのミスリードである。

 日本も過去何度か調整期を経験している。高度成長期にも1965年に東京五輪直後の停滞、70年代前半に2回にわたるオイルショックに伴う危機、85年プラザ合意以降の円高危機、そして90年代のバブル崩壊と金融危機である。

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