百田氏が指摘したのは、八幡氏によるブログサイトの記事のことだ。八幡氏は『日本国紀』がなぜ売れたかを箇条書きにまとめたあとで、内容について以下のような10の疑問を提示している。
(1)万世一系を否定している
(2)大和朝廷が任那を領土とし百済を従属的な友好国としていたという歴史的な主張を否定し、かなりのちの時代まで九州王朝が主体でないかとし、百済を植民地のようなものだったとしている
(3)足利義満暗殺説など陰謀史観的な記述が多い
(4)日蓮やその宗派とか陽明学とかが出てこないなど宗教や思想についてアンバランス
(5)江戸時代の封建制や鎖国のデメリットへの認識が不十分
(6)尊王攘夷が維新の原動力となったことの意味を理解しておらず極端にアンチ長州である
(7)学校制度が典型だが明治維新と文明開化への評価が極端に低い
(8)さきの戦争について、「日本だけが悪いわけでない」ならともかく「日本は悪くない」に傾きすぎて、海外で修正主義の烙印を押されるリスクが高い
(9)ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代について暗黒時代がごとき評価になっている
(10)日本人の国防意識の低さへの批判は正当だが、それを占領軍の責任に押しつけすぎ
八幡氏は、『日本国紀』を「百田版の日本通史」として高く評価しながらも、本のタイトルを『日本書紀』に寄せておきながら、『日本書紀』の記述を否定していることについて明確に批判している。上の10点のうちの(1)がそれである。つまり、「『日本国紀』が万世一系を認めていない以上、『平成版日本書紀』として認めるわけにはいかない」というわけだ。
八幡氏の指摘への反論はなし
八幡氏は、百田氏の作家としての能力を認めているからこそ、「『日本書紀』の否定」がこのまま広く浸透することに危機感を覚えていることがわかる。
ところが、百田氏はさらにこっぴどく批判した。
「八幡和郎という東大出の元官僚で、選挙に落ちまくり物書きになった男が『日本国紀』の小判鮫本を出すらしい。『日本国紀』が出た直後からネットで悪口を書きまくり、本当の歴史が知りたくば俺の本を読めと必死で誘導していたが、ついに寄生虫の本を出版か。 物書きとしてのプライドはないのか!」
百田氏は八幡本を「寄生虫の本」と侮辱するが、「単なる寄生虫の本」と罵るのは、いささか乱暴すぎるだろう。
ついでながら、杉田議員の画像も、写真アプリで多少美化している可能性もないではないが、わざわざ手動で加工したものとは思えない。写りの良い画像を選ぶくらいの自由は許容してもいいのではないか。
ただし、両者の対立点は単純かつ根本的である。