10月5日のTPP(環太平洋経済連携協定)大筋合意発表からすでに50日が過ぎようとしているが、依然として政府からはTPP協定の全文の公表がなされていない。そんななか、内閣官房TPP政府対策本部が11月5日、「環太平洋パートーナーシップ協定(TPP協定)の全章概要」を公表した。
TPPの大筋合意では関税撤廃率95.08%というかつてない関税撤廃率の高さが全国の農業生産者に衝撃を与えたが、政府公表のTPP全章概要を詳細に見ると、さまざまな関税撤廃へ向けた「仕掛け」が存在することが明らかになった。
第一に、第2章附属書譲許表に7年後再協議規定が明記されたことである。文章上は次のようになっている。
「我が国は、TPP協定の効力発生から7年が経った後、又は、第三国若しくは関税地域に徳恵的な市場アクセスを供与する国際協定の発効若しくは改正の効力発生に必要となる我が国と当該第三国等による法的手続が完了した後、相手国からの要請に基づき、自国の譲許表で規定される関税、関税割当て及びセーフガードの適用に関連する原産品の取扱いに関して協議を行う旨を定める規定を、豪州、カナダ、チリ、NZ及び米国との間で相互に規定」
要するに、TPP協定発足7年後に豪州、カナダ、チリ、ニュージーランド(NZ)及び米国との間で、関税、関税割当及びセーフガードの適用に関連する原産品の取り扱いに関して、相手国からの要請に基づき協議を行うとの規定である。TPP政府対策本部の説明では、この規定は関税撤廃を免れたコメなど重要5品目が対象となるとのことである。
文章上は、協議内容にはなんの留保条件も明記されていない。仮に、米国政府からコメの関税撤廃を求める協議が要請された場合、日本政府はそれに応じなければならないわけである。同様にNZから乳製品の関税撤廃を要請されれば、協議に応じなければならないのである。7年後の政治経済状況は今から予測はできないが、7年後の政治経済状況によっては、その再協議によって重要5品目の関税撤廃があり得ないとは断言できない。
関税撤廃時期の繰り上げも可能
第二に、第2章の第4条の規定では関税撤廃時期の繰り上げ協議規定が以下のとおり明記されている。
「いずれかの締約国の要請があった場合には、当該要請を行った締約国及び他の一又は二以上の締約国は、関税の撤廃時期の繰上げについて検討するため協議すること、締約国は、本章の附属書の自国の表に定める原産品の関税の撤廃時期をいつでも一方的に繰り上げることができる」