内閣府には必要なくても、会計検査院には必要な書類
裏ルールがあえて特別に設定されたのは、何らかの理由や、何らかのニーズに応えてのことなのだろう。空から降ってきたり、自然発生的に決まったりするような筋合いのものではない。
招待者名簿が廃棄されたことによって生じる問題として、まず思い浮かぶのは「作業効率の悪化」である。過去の招待者名簿がないのに「同じ人が推薦されない」よう配慮する原則を徹底することなど、事実上不可能である。紙の名簿と合わせて、電子データも消去してしまったとされているので、招待者の選考作業は今後、人力で行なわざるを得ない。前年までに招待されていた人を名簿から弾く作業にしても、あやふやな記憶を頼りに手作業でやることになる。招待者が1万人から2万人にも及ぶことを考えれば、それこそ気の遠くなるような作業だ。
名簿を処分してしまうということは、そうした作業に当たる官僚に対するパワハラまがいの仕打ちであり、税金を元手とする人件費の無駄遣いでもある。「桜を見る会」は国費で運営されているだけに、今後、会計検査院のチェックが間違いなく入ることだろう。
会計検査院の立場から見れば、招待者名簿は国の会計事務に関する証拠書類である。提出を怠ったりすればその担当職員は、会計検査院法第二十六条および第三十一条第二項違反により懲戒処分を受ける恐れがある。
【会計検査院法】
第二十六条 会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。この場合において、帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出の求めを受け、又は質問され若しくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならない。
第三十一条 会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。
2 前項の規定は、国の会計事務を処理する職員が計算書及び証拠書類の提出を怠る等計算証明の規程を守らない場合又は第二十六条の規定による要求を受けこれに応じない場合に、これを準用する。