急激な人口増に対応できないというのは理解できるが、人口があまり多くない区でも同様に待機児童問題が発生しているという。千代田区在住の20代女性は語る。
「千代田区は居住者が少ないため保育所も入りやすい、といわれているので安心していたのですが、現実は厳しかったです。区役所に相談したところ、『そもそも人口が少ないため施設数も少ないので、倍率的には待機児童問題が深刻といわれるほかの区と同じくらいと考えてください』と諭されました。また、年度初め分の申し込みでは、希望する保育所を限定してしまうと入れる確率が5~6割くらいとのこと。『区内すべての保育所を選択して申し込めば、どこかには入れますよ』と言われましたが、千代田区も広いので自宅から遠い保育所になんか預けられるはずがありません」
このほかにも待機児童問題に頭を抱える親は後を絶たない。世田谷区在住の30代女性も次のように嘆いている。
「世田谷区は“待機児童数全国一”と不名誉な称号で注目を浴びてしまっていたので、一定の条件を満たした無認可保育所を認可保育所に切り替えるなど、行政の取り組みも熱心なことで知られています。しかし、私の住む地域では0歳児の認可保育所で約80人の定員のところに約150人の申し込みがあるなど、半数の人は入れないようです。無認可施設ならばなんとか入れる可能性もありますが、保育料が高額なので諦めて仕事を辞めるママさんも多いです」
施設を増やしても「待機児童が減らない」
このように、女性の活躍を謳う一方で、子どもを預けることができずに職場に戻れないという既婚女性は少なくない。東京大学で教鞭を取る傍ら保育所の運営にも携わる瀬地山角氏はこの状況を次のように分析する。
「東京23区では当分の間、保育所の数は足りない一方だと思います。各自治体がその年の待機児童数を公表していますが、たとえその人数分を受け入れられるだけ保育施設を増やしたとしても、翌年また待機児童が生まれるだけでしょう。なぜなら、待機児童には第一希望の認可保育所に入れず、そこが空くまで子どもを認可外保育所や認証保育所に入れている親御さんや、認可外の高額な保育料を払えず入園を断念してしまった親御さんの数は含まれていませんからね。さらには、「保育所に預けられるのなら働きたい」という潜在的需要も存在します。つまり新しい保育所を建てたとしても、そういった待機児童にカウントされていない人たちからの応募が殺到し、結局また新たな待機児童が生まれることになるのです」