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局幹部「東海テレビのイメージ棄損している」…問題作『さよならテレビ』公開、衝撃のラスト

文=編集部
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『さよならテレビ』パンフレットの表紙

 話題のテレビドキュメンタリーの映画化作品が、東京都中野区の「ポレポレ東中野」で上映が始まった。作品名は『さよならテレビ』。2日の初日舞台挨拶には満員の125人が会場に押しかけ、注目の高さをうかがわせた。

 『さよならテレビ』は東海テレビ放送(名古屋市)の開局60周年記念番組として放送された同名のドキュメンタリー番組を再編集した。同局は『死刑弁護人』『平成 ジレンマ』『ヤクザと憲法』など、タブーを恐れぬ鋭い切り口のドキュメンタリーを世に送り出している。そんな同局が今回挑んだ業界のタブーは、自分たち自身。つまりテレビ局の報道現場だった。

 監督は『ホームレス理事長 退学球児再生計画』『ヤクザと憲法』などを手掛けた土方宏史氏(※)、プロデューサーは『人生フルーツ』『眠る村』『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』の阿武野勝彦氏だ。

 作品は2016年11月、東海テレビの報道フロアから始まる。自社の報道フロアにカメラを入れ、取材を始めると伝える土方氏に、渋面を浮かべて反発する編集幹部たち。報道に携わる社員たちの本音と建て前を巧みにあぶりだしながら、次第にカメラは入社16年目(いずれも当時)の福島智之アナウンサー(37)、ベテラン契約記者の澤村慎太郎氏(49)、制作会社の派遣社員、渡邊雅之記者(24)の3人にクローズアップしていく。働き方改革の余波、日々の視聴率競争や「ぜひもの」という営業支援取材の実態、警察幹部などの情報提供に基づく「抜き抜かれ」のスクープ合戦などを折り込みつつ、作品は衝撃的なラストに向かっていく。

「社内試写会はしたが意見は聞かなかった」

 放映後に行われた舞台挨拶には監督の土方宏史氏が登壇した。観客の質問に答えるかたちで、撮影秘話を明かした。会社が提示した報道フロアでカメラを回す条件だった「テレビ放送前に局内で試写を行うこと」について、土方氏は次のように語った。

「結局、放送することに関して、社内の同意は取れていません。放送オンエアの2日前くらいに試写会をしました。みんなテレビの人間だから、もうその段階で文句を言っても内容は変わらないとわかっていたので、そのままオンエアされました。試写会をやるとは言ったけれど、感想を聞くとは言っていないという、頓智のような話です。放送後、2週間くらいして、取材対象者やそれ以外の社員から話を聞くために反省会を行いました。

 立場が違うとみんな考え方も違う。人事系の社員からは『新入社員が来なくなる』と言われました。幹部の人たちからは『東海テレビのイメージを棄損している』と指摘されました。今も、放送直後の雰囲気は変わっていません。撮られた人たちの痛みは消えません。編集で切り取っているわけですから。その当事者の人たちにとっては、触れてはいけないことになっています」

あえて非社員をメーン登場人物に

 また、作品でクローズアップされた人々の多くが東海テレビの正社員でないことに関しては次のように語った。

「当初は社員も追っかけていたんですが、撮影を進めていくうちに社員じゃない人がメーンになっていきました。撮影時からこのままだと舞台挨拶時に、『社員が撮れていない』と言われると予想はできました。でも、それが怖いがために、社員を撮りましょうというのは違うと思いました。

 社員は受け答えが上手です。すごい勢いで突っ込めば、何か出るんでしょうが、自然に素が見えてくる人を撮りたかった。

 また、メーンの登場人物を応援してもらいたいなと思ったんです。正社員は容易に解雇されませんし、高給で待遇面も含めて応援したくなりません。感覚的には政治家と同じです。それぐらい嫌う要素がある。だからこそ非社員を通して、間接的に社員が見えてくるかたちにしました。

 派遣社員の記者のように弱い立場の人に対してどのようにふるまうかで、その組織・社員の性質がわかると思いました」

 舞台挨拶後、土方氏に今作の見所を改めて聞いた。

「当初から今回の映画版に近い形のものを作ったんです。ですが、テレビ放送用の尺に合わせて泣く泣く落としたシーンがたくさんありました。例えばメーンの登場人物をもっと好きになってもらうための場面です。映画版ではメーンの登場人物の仕事以外の側面、例えば自宅の様子や趣味のアイドルライブに参加している様子などを復活させました。

 往々にしてドキュメンタリーはハッピーエンドでは終わりません。登場人物たちは、次の日からケンカをしながら日々を過ごしていきます。特に今、問題になっているものを描いた時に、安易なハッピーエンドはどうだろうという思いがありました。

 撮影をしたことで、何らかの解決策が見出されているとか、取材対象が良い状態になったということはありません。少なくとも僕らが撮っているテレビ局はハッピーエンドではない状態です。だからこそ、最後はああいう終わり方にしました」

 『さよならテレビ』は今月いっぱいまでポレポレ東中野で公開中。その後、神奈川、埼玉、群馬、宮城、山形各県と北海道などで順次公開の予定だ。

(文=編集部)

※編注 土方宏史氏の「ひじ」は「土」に「、」

BusinessJournal編集部

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