こうしたひどい条件にもかかわらず、なぜ若者はインターンをするのか。それは、若者の就職難と企業が望む人材像にある。最近、韓国では若者向けの質の良い仕事は減少している。一方、企業は業務に関係する経験を持つ人物を望んでいる。こうした状況では、ほかの求職者より仕事と関係のある経験を多く積んだほうが有利であることは明らかだ。そのため韓国の若者たちは、無給でも構わないから仕事を与えてもらい、経験を積みたいと考えるのだ。
若者たちのこうした希望は、企業としてはメリットが大きい。インターンとして働かせることで、正社員として雇う前に対象者の力量を見定めることができる。
だが、正式採用の参考にすることを目的としたインターンであればまだましなほうだ。最近では、そもそも採用の意思がまったくないのにインターンを雇う企業が増えている。仕事の経験を積みたいと思う若者はいくらでもいるため、インターンの期間をすぎても、別のインターンを雇えば継続雇用義務を負わず、人件費も削減できる。このように明らかなインターン制度の恣意的な悪用が横行しているのだ。
情熱ペイが社会問題になったため韓国雇用労働部は今年1月、ガイドラインを作成し、「インターン」との名称であっても事実上「労働者」に該当するケースを明確化した。労働者に該当する場合は、インターンの取り扱いについて労働法に従うことを企業に勧告している。だが、これは新しい法律をつくったわけではなく、もともと存在する法律に従うように指導しているだけなので、実効性があるかは疑問といえる。
情熱ペイ問題が完全になくなるまで、まだ道は遥か遠そうだ。
(文=キム・ボヨン/韓国弁護士、構成=Legal Edition)
キム・ボヨン(Boyung kim)/韓国弁護士
ソウル大学国語国文学科卒業。漢陽ロースクール修了。2012年第1回韓国弁護士試験合格後、ソウル高等裁判所のロークラーク(調査官)として裁判実務に従事。建築紛争を中心に、一般民事事件を幅広く扱う。2014年に韓国弁護士登録(ソウル地方弁護士会)
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