新型コロナウイルス感染症の被害拡大を受けて、政府の公式見解として発表を続けている厚生労働省の公式Twitterアカウントが、またしても物議を醸している。このアカウントでは今月上旬、情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)を名指しして番組内容に異を唱えた後、翌日の同番組の反論を受けて、内容を訂正する騒ぎがあった。今回は何があったのか。
「ドライブスルー方式では、医師の診察を伴わないことが多い」→訂正
厚労省公式アカウントは15日、以下のような投稿をした。
新型コロナウイルス感染症にかかっているのではないかと心配される方が、PCR検査を受けるためには、医師の診察が重要です。「ドライブスルー方式」では、医師の診察を伴わないことが多いため、我が国では、実施しておりません。(2/5)
— 厚生労働省 (@MHLWitter) March 15, 2020
「【#新型コロナウイルス『ドライブスルー方式』のPCR検査を実施しない理由について】『ドライブスルー方式』のPCR検査が、いくつかの報道で紹介されています」
「新型コロナウイルス感染症にかかっているのではないかと心配される方が、PCR検査を受けるためには、医師の診察が重要です。『ドライブスルー方式』では、医師の診察を伴わないことが多いため、我が国では、実施しておりません」
ところが、翌16日には次のように訂正した。
現在ドライブスルー方式でのPCR検査を行っている国では、問診票を配布し、医師が検査の要否を判断しているものがあると承知しており、正確性を欠く表現であるため、訂正させていただきます。(2/3)
— 厚生労働省 (@MHLWitter) March 16, 2020
「3月15日に投稿した『ドライブスルー方式のPCR検査を実施しない理由』と題するツイッターで、ドライブスルー方式を導入しない理由として、『医師の診察を伴わないことが多い』との記載をしていました」
「現在ドライブスルー方式でのPCR検査を行っている国では、問診票を配布し、医師が検査の要否を判断しているものがあると承知しており、正確性を欠く表現であるため、訂正させていただきます」
17日にはBS‐TBS『報道1930』が、厚労省の一連の投稿を取り上げた。そのうえで、韓国のドライブスルー方式を現地取材し、医師が診察をしたうえで、感染の疑いのある人に検査を実施している様子を報道している。
官邸の関与はあるのか
政府関係者は次のようにいぶかしがる。
「いったいどうしたことだと思いますね。霞ヶ関では厚労省方針への、今井尚哉首相補佐官ら首相官邸の関与が取りざたされていますが、いずれにせよ公文書として緻密さに欠けます。
そもそも論ですが『モーニングショー』の一件以来、なぜTwitterアカウントの“厚労省氏”は、ネット上の検査方法をめぐる議論に加わろうとしているのでしょうか。議論をするのは有識者の役割で、官僚の役割ではありません。専門家の様々な意見のとりまとめをするのが、官庁である厚労省の役割です。にもかかわらず、あやふやな見解をTwitterで投稿しては、訂正するということが繰り返されています。これは笑って済ませられる間違いではなく、政府方針そのものの屋台骨が揺らぐ行為です。
一般的に国会への説明資料や官報、マスコミ向けの広報資料などを作成する場合、職員は誤解のない文章にするために上長から何度も何度も書き直しを命じられます。そのうえで、公表されるのが各省の公式説明であり、見解なのです。それでも間違いはありますが、一連のミスを見ている限り、そうしたチェックを経ているようには見えません。
これまでも閣僚や議員が、自身の主張や見解を各個人のアカウントで述べて批判を集めることはありましたが、省の公式アカウントでそれと同様なことが行われるのは前代未聞です。
いったい誰の文責なのか。またどこで投稿する内容の確認がなされているのでしょう。少なくとも韓国のドライブスルー方式で『医師が現場で診察しているかどうか』などという基本的な情報は、現場で働いている担当官や医官、専門家の間では常識です。事実確認がしっかりできていないのなら、投稿すべきではないと思います」
国民への情報発信の機会が増えることは歓迎すべきことだ。だが曲がりなりにも政府機関としての見解を公表するのであれば、細心の注意はあってしかるべきだろう。
(文=編集部)