「宝箱の鍵」は、あくまで「宝箱」を開けるために使われるのであって、「宝箱の鍵」自体によってほかのアイテムと交換したり、LINEからサービスを受けられるといった効果はないとも考えられる。
「前払式支払手段の3番目の要件『そのポイントやアイテムが、ほかの商品やサービスの提供に使われる』が満たされるのか、という点も問題になっていきます。LINEが前払式支払手段に該当しないと判断したのは、以上のような事情があると思います」(同)
前払式支払手段に該当する場合、供託義務が発生
では、仮に「宝箱の鍵」が前払式支払手段に該当する場合は、どうなるのか。前払式支払手段に該当すると、企業にとって資金決済法上のさまざまな義務が生じることになる。特に負担となるのは、供託義務だ。
「ポイントや仮装通貨の未使用残高が1000万円を超えるときには、未使用残高の2分の1以上の金額を営業所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。供託は、資金が眠ってしまうということであり、企業にとっては命取りになりかねない事態なのです」(同)
一番の問題は、前払式支払手段に当たる基準が明確にされていないことだと、中野弁護士は指摘する。
「LINEのプレスリリースでも、前払式支払手段に該当するか否かに関しては、専門的、技術的な問題があり、法令上も行政実務上も判断基準が明確でないと指摘しています。基準が不明確ななか、後から前払式支払手段に当たるとされて、多額の供託金を支払わされるという事態が生じるのであれば、企業としては大きなリスクを抱えることになってしまいます。行政がどういう判断をするのか、注目です」
LINEに限らず、ソーシャルゲームにおいてはアイテムと交換するための「ルビー」のようなポイントを買わせることで利益を得るシステムを用いているケースが多い。今後の進展によっては、ゲーム業界全体に大きな混乱が起きかねず、成り行きが注目される。
(文=Legal Edition)
【取材協力】
IT・ウェブ企業専門の弁護士 中野秀俊
大学時代、システム開発・インターネット輸入事業を起業、経営を経験する。IT・インターネット企業からの相談を数多く受け、相談件数は500件以上。IT・法律・経営のすべてを熟知している数少ない弁護士である。著書に『ここをチェック! ネットビジネスで必ずモメる法律問題』(日本実業出版社)がある。
ホームページ http://it-bengosi.com/