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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国共産党内、習近平の「コロナ拡大隠蔽」の責任を追及する会議開催要求…揺らぐ独裁体制

文=相馬勝/ジャーナリスト
中国共産党内、習近平の「コロナ拡大隠蔽」の責任を追及する会議開催要求…揺らぐ独裁体制の画像1
新型ウイルス肺炎が世界で流行 中国で一斉黙祷(写真:ロイター/アフロ)

 中国では4日午前10時(日本時間同11時)から各地で新型コロナウイルスによる犠牲者への追悼式典が実施された。習近平国家主席は中国共産党・政府最高幹部とともに、最高指導部が居住・執務する「中南海」で3分間の黙祷をささげた。北京駅でも防空警報のサイレンや車両の警笛が鳴り響くなか、駅関係者や市民らが黙とうするなど、同様の光景は中国各地でも演じられた。

 中国ではこの4日は、祖先を供養し墓参りをする伝統的な祭日である「清明節」に当たっており例年は墓参りをする人が多いが、今年は感染防止のため外出制限措置がとられていた。その代わりに、全国規模の追悼集会の実施が急遽、前日の3日に発表された。これは新型肺炎による死者の墓参りや葬儀ができない市民の不満が爆発しないための「ガス抜きの措置」(北京の外交筋)とみられている。

 習氏は1日、浙江省の視察の際、「新型コロナウイルス感染のピークは過ぎた」と述べて、今後は感染拡大によって停滞している経済活動の立て直しを行う強調。8日には感染拡大の震源地となった湖北省武漢市の封鎖措置が解除される予定だ。それだけに、4日の全国規模の追悼集会には、習近平指導部の措置が奏功し「疫病戦争に勝利した」ことを誇示するとの思惑が働いているのは間違いない。

「党政治局の緊急拡大会議の即時開催を求める建議」

 しかし、事態は習氏が思うようにはいかないかもしれない。なぜならば、中国共産党の内部では「改革派人士」が発起人となり、習氏の約8年間の最高指導者としての政治的評価をめぐって党中央政治局拡大会議を開催するよう求める建議書が出回っているからだ。

 この書は「党政治局の緊急拡大会議の即時開催を求める建議」と題したもので、会議開催の目的は習氏の党総書記としての功績と失政を明確にして、中国の外交や経済、台湾・香港政策など広範な問題について、今後の基本的方針を再度確立すべきというもの。具体的には、習氏が党総書記として適任かどうかを評価することだ。

 建議書は「習氏は中国内の自由な意見を封殺し、独裁体制を強めており、党の核心としての地位と利益を守るために汲々としている」とか、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、「情報を隠蔽したことで、疫病を制御不能な状態にまで蔓延させた」などと述べて、最高指導者としての習氏に極めて批判的な内容となっている。

 さらに、政治局拡大会議の議長団として、習氏の政敵とされる李克強首相や、李氏と同様、習氏が中心の太子党(高級幹部子弟)閥と対立する中国共産主義青年団(共青団)閥の有力幹部である汪洋・副首相が名を連ねており、建議そのものも党内の反体制派色が強い。

 これは昨年末からの湖北省武漢市での新型コロナウイルスの感染拡大を隠蔽し、パンデミック(世界的大流行)を許した習近平党最高指導部への不信感が引き金になっており、党内で習氏の指導力そのものが問われる事態に発展する可能性が出てきたといっても過言ではないだろう。

 しかし公式に確認されている限り、党政治局拡大会議は党創設以来、1935年1月の毛沢東主席の実質的な軍最高指導者就任と、87年1月の胡耀邦総書記の解任のために開かれた2回しか開催されていない。それだけに、習氏ら党内最高指導部の反対を押し切っての開催は難しいとみられる。が、インターネット上とはいえ、これだけ習氏に批判的な内容が大っぴらに流布しており、党内では習氏の独裁体制強化への反発や不満が爆発寸前になっているのは否定できない事実であろう。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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