社員として会社に勤めている人は、あらかじめ決められた給料をもらうことが普通だ。それに加えて、副業である程度稼ぐことができれば、生活に余裕が出るかもしれない。
最近では、大手企業でも副業を許容する動きが出てきている。製薬大手のロート製薬は、2月24日に「社外チャレンジワーク」の導入を発表した。これは、土・日・祝・終業後に、兼業を認める制度だ。「『ロート製薬』という会社の枠を超え、より社会へ貢献し自分を磨くための働き方ができるよう」(同社HP)にするためだという。
その一方、就業規則で「第○条(兼業の禁止) 従業員は、会社の許可なく他の営業、事業に従事してはならない」といったかたちで、兼業を禁止している会社は少なくない。そのような会社の社員が、副業していることを会社に知られたら、懲戒処分を受ける、またはクビになるかもしれないと心配する人もいるだろう。
これについて、労働問題に詳しい浅野総合法律事務所の浅野英之弁護士は、「兼業禁止規定に対する懲戒処分が有効な場合は、労働法の裁判例においては限定的に考えられています」と語り、必ずしも懲戒処分の対象となるとは限らないとの見解を示す。
従業員の兼業・副業は、所定労働時間以外に労働をすることで本来の業務に専念できなくなる可能性が懸念される。裁判例においても、兼業禁止を定める就業規則自体の有効性は認められている。ただし、兼業禁止規定を形式的に適用して、すべての兼業を不許可とすることや、副業をしていた場合は一律に懲戒処分を課すといった運用は難しいようだ。
そのような処分をした場合に、労働者が労働審判や訴訟を起こして紛争化すれば、懲戒処分が無効となり、会社側は損害賠償義務を負うおそれがあるという。
「本来、業務時間外はプライベートな時間であり、企業の業務命令権限が及ばず、労働者が自由に利用できるのが原則です。労働者は、憲法上の職業選択の自由、営業の自由(憲法22条1項)によって、会社の業務命令権に拘束されない限りは、自由に職業を選択することが可能なのです」(浅野弁護士)
兼業を制約することができる場合とは
社員として会社に勤めているからといって、何もかもを会社に拘束されるいわれはない。どのような仕事をするのかは、原則として自由に決めることができるのだ。ただし、雇用契約を締結している以上、会社の業務にかかわる一定の制約は可能だという。