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従来、英国経済はEU加盟から恩恵を受けてきた。金融業界では、どこかひとつのEU加盟国で認可を得れば、域内で自由に支店開設などが可能だ。これを単一パスポート制度という。シティと呼ばれるロンドン金融市場が世界から資金を集め、ニューヨークと匹敵する存在を誇っていただけに、多くの大手金融機関が欧州拠点をロンドンに置き、欧州事業を展開できたのである。この結果、金融セクターは英国経済の10%程度のウェイトを占めるまでに成長した。
国民投票の結果に沿ってEU離脱が正式に進む場合、多くの金融機関は英国からの拠点の移転など、欧州事業の見直しを余儀なくされるだろう。新興国経済の減速や金融規制の強化もあり、金融機関の収益基盤は不安定だ。事業戦略の大幅な修正は、多くの銀行の経営不安を高めるだろう。
また、ドイツなどのEU加盟国は離脱を求める動きがドミノ倒しのように域内に広がることを警戒し、英国に対して一切の特別扱いはしないと表明している。欧州政治の中で、英国は厳しい状況に追い込まれたといってよい。それだけに、EU加盟のメリットが雲散霧消し、金融機関の経営基盤が脆弱になる可能性は高まっている。
政治の不安定化は、経済にマイナスの影響を与える。金融以外のセクターでも、多国籍企業が英国にある拠点を国外に移すことを検討し始めている。自動車産業の場合、現状では英国からEUに輸出する場合の関税はゼロだ。しかし、英国がEUから離脱すれば関税率は高まると考えられる。つまり、輸出には追加のコストが生じ、英国から欧州へ輸出を行ってきた多くの企業の競争力が削がれる。
国民投票の結果を英国の世論、政治家がどう議論し、EUとの交渉に臨むかは不透明だ。そうした状況のなかで投資家が積極的にリスクを取ることができるか、議論の余地が残る。国民投票での離脱支持が予想外の結果だっただけに、当面は小康状態が続くかもしれない。そのうえで、政治のリスクが高まり、金融市場が不安定に推移しやすいことは冷静に考えたほうが良いだろう。
欧州銀行の経営不安が世界経済に与える影響
今後、欧州の銀行は経営基盤を強化しなければならない。中国経済の減速など収益機会は減っている。金融機関の経営を安定させるためには、リストラが必要だ。収益の拡大がままならないなか、リストラ費用が経営を圧迫しないかが懸念される。
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