9月13日付当サイト記事『ツタヤ図書館、CCC作成の約6千冊選書リストをたった4日で審査・決裁』において、宮城県・多賀城市立図書館が3月21日のリニューアルオープンに際して、運営者となるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が非常に不可解な選書を行っていた実態を見てきた。
3万5000冊という大量の本を一時期に購入することも通常の図書館では考えられないが、購入にあたって市教育委員会がその選書を十分にチェックできていたのかどうかは、非常に心許ない。前回記事において、毎週のように数千冊規模でCCCから提案される選書に対し、わずか数日で決裁していたと紹介した。
今回、もうひとつ注目したい点は、新刊購入に関するスケジュールが異様にタイトであることだ。
新刊分の選書リストは、すべて昨年11月以降に提出されている。しかも、新刊全体の8割近くが12月1日から1月5日までの、ほぼ1カ月間に集中しているのだ(下図参照)。
遅くともリニューアルオープンの前日までには、購入した書籍にラベルやバーコード、ブックカバー、ICタグなどを装備して登録・配架しなければならない。そのためには、この年末年始がギリギリのスケジュールだったに違いない。
ところが、最終的な「受入決定日」を見ると、第4回から第11回までの新本分は、ほぼすべてが「3月24日」となっている。受入決定されなければ、配架もできないはずだ。つまり、新刊の配架は3月21日のリニューアルオープンに間に合っていないのである。
ツタヤ図書館が誇る、開放感あふれる吹き抜けスペースには、4メートルを超える高層背面書架がある。その“見栄え”を考えれば、何がなんでもリニューアルオープン当日までに隙間なくギッシリと本を壁面いっぱいに詰め込みたかっただろう。何せ、CCCはリニューアルに際して書庫をなくして閉架図書まですべて開架にし、高層部分にはモデルルームのように中身が空洞の“ダミー本”まで並べているほどだ。納入が間に合わず、書棚に空白ができるなど受け入れがたい事態だったはずだ。
ところが、市長とCCC社長が出席して派手なオープニングイベントが開催されていた裏側では、追加蔵書として新刊が大量に配架されるはずの棚に、実際に収められていたのは中古本ばかりだったのだ。せっかく購入した2万数千冊の新刊が、鳴り物入りのイベント当日までに間に合わず、ゴッソリ抜け落ちるという大失態が演じられていたのである。
市教委「特に支障ない」
リニューアルオープン当日、新図書館に出掛けて「素晴らしい選書だ」と感じた人がいただろうか。その日、訪問客が目にした蔵書は、旧図書館職員が休館中に行った選書、あるいは中古本であり、運営者による新刊は含まれていなかったのである。
昨年8月に発覚した武雄市図書館における古本騒動の影響で、急遽新刊を4000冊以上増やすことになったしわ寄せが最後にきたといえるだろう。
その点を市教委に問い合わせたところ、第4~11回までの追加蔵書は、3月21日に配架されていなかったのは「事実」と認めつつも、「特に支障はなかった」と回答。
リニューアルオープン直後、地元のメディアは新しい多賀城市立図書館を手放しで絶賛する報道であふれたが、一方でこうした「不都合な真実」は市民には一切知らされることはなかった。
次回は、同図書館がどんな新刊を購入しているのかについて、さらに詳しくみていきたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)