以来約3カ月、烏坎村は当局の厳しい監視下と統制に置かれた。そのなかで、村民たちは村長釈放を求めて約85回のデモを続けてきた。そして9月8日、林祖恋に懲役3年1カ月の実刑と罰金20万元の判決が言い渡された。
当局は8日から10日まで抗議デモを行うことを禁止すると通達したが、村民たちはこれに抵抗。当局サイドは13日未明、いきなり3000人の警官隊を村に突入させ、デモの首謀者とみられる村民13人の逮捕に踏み切った。村民はさらに抵抗したので、警官隊はゴム弾、催涙弾を用い、負傷者は50人以上に上った。老人が血まみれになって倒れる様子などが映った生々しい映像が、一部インターネット上で流れ、その様子に天安門事件を思い出す人も少なくなかった。
村にはまだ武装警察が駐留し、村民との緊張関係が続いている。今のところ死者は出ていないが、村民の抵抗が長引けば、本格的武力鎮圧が起きるのではないかと国内外の人々が固唾をのんで見守っている。
中央レベルの権力闘争が飛び火か
なぜ中国当局は、今年になって烏坎村に対して、このようなアクションをとったのだろうか。12年の烏坎の乱終結からおよそ5年、「自治の村」とはいえ、林祖恋は党書記を兼務している党員であり、村の運営は必ずしも反党的ではない。土地問題の解決は村長兼書記としての任務であり、そのことで上級機関に陳情を行うことは違法でもない。
そもそも農村の土地問題の陳情など毎日のように全国で履いて捨てるほど行われ、ほとんど解決しない。烏坎の土地問題もそうして5年たっても放置され続けてきたのだ。汚職で逮捕というのは誰がみても建前にすぎない。本当の狙いはなんなのか。
これは推測でしかないのだが、やはり中央レベルの権力闘争が絡んでいるのではないか。
たとえば、米国が運営する多言語ラジオ放送『ボイス・オブ・アメリカ』の討論番組(9月16日)で在米華人学者たちがこんな意見を示している。
「中国では毎年数万の民間集団事件が発生しているが、習近平はこうした挑発行為を絶対容認せず、手段を選ばず鎮圧にかかる。催涙弾、ゴム弾を徒手空拳の村民に向かって発砲したのは、習近平の農民の乱の対する姿勢を非常に露骨に示している。これはかつての汪洋の“懐柔”処理方式を否定する意味もあり、新しい権力闘争のかたちであろう」(在米華人評論家・王康)