民進党は「法案を審議する環境にない」として、30日の審議入りに反対し、委員会を欠席した。12月6日の衆院本会議の決議では、社民党、自由党とともに民進党は退席した。この時にIR議連の民進党議員も退席している。カジノ推進の立場であっても、審議の進め方に納得がいかないとの考えでの退席だ。この時点まで民進党は、カジノへの賛否の違いはあっても、足並みを揃えていた。
カジノ法案議論の場が参院に移ると、蓮舫代表を先頭にして、民進党は「徹底抗戦」を掲げた。内閣不信任決議案などを連発して会期延長に持ち込み、廃案に持ち込む作戦だったという。
だが、民進党の参院国対委員長の榛葉賀津也議員が採決に応じたことから、12月14日に採決となりカジノ法案は参院でも可決された。榛葉議員が応じたのは、ギャンブル依存症防止を明示する一文を条文に入れる、法律施行から5年以内に見直しするという譲歩を、自民党から得たからとのこと。
その榛葉議員は14日に記者会見している。「安倍総理自身が何がなんでもこの議員立法を通すのだという意思がそこにある。議員立法という皮を被った閣法がカジノ法案だ」と批判を語っているが、「頭を冷やして衆院でやり直せという怒り、参院としての矜持、野党としての法案への怒りを込めて送り返した」と採決に応じた気持ちも語っている。そしてカジノ法案は、12月15日未明、衆院本会議で可決された。
ガバナンスの問題が一気に露呈
参院での採決があった12月14日、民進党のIR議連が「榛葉氏は党が決めたことと別なことをやった」「蓮舫代表は参院議員なのに参院民進党をコントロールできない」などとして、榛葉氏を処分するよう野田佳彦幹事長に申し入れるという動きもあった。蓮舫代表は、「組織の結束に向けどういうことができるか考えたい」と15日の記者会見で答え、処分は曖昧なままだ。
民進党のカジノ推進議員にも不満がくすぶり、公明党との間にすきま風が吹くという状況も生まれた。数の力による審議強行は、自民党にとって賢い選択だったのだろうか。
今回のカジノ法案成立をめぐる一連の民進党の動きについて、ジャーナリストの朝霞唯夫氏は次のように解説する。
「党内のガバナンスの問題が一気に露呈したかたちです。榛葉参院国対委員長は、自民党から譲歩案を引き出したため採決に応じたとしているが、蓮舫代表が事前にそれを知らなかったというのは、これだけの重要法案にもかかわらず、党内の意志疎通がなかったことを物語っています。民進党はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)関連法案の審議などでも、たて続けに抵抗戦術をとってきました。それが国民の目からすると“単なる反対野党”に映り、またしても批判の矢面に立ってしまうのではないか、との危惧が党内にはあった。そこで落としどころを自民党が出してきたため、民進党はそれに乗った。同党内では、このような見方がもっぱらです。