慰謝料150万円のリスクも想定のうえで公開
張谷氏は、自力救済はいけないことだと承知のうえで、行動に起こしたという。
「一般の方々から名誉棄損、人権侵害、プライバシー侵害、私刑なのではないか、という声が上がるのは想定していましたし、実際にお電話などでそのようなご意見も頂きました。また、弊社とお付き合いのある弁護士にも相談したのですが、やはり名誉毀損やプライバシー侵害で逆に訴えられる可能性さえあるとおっしゃっていました。それでも、公開せざるを得なかったというのが実情なのです。
弁護士に相談した際に、その男が『俺は盗んでない』と言い張って無実になり、逆に名誉棄損で訴えられた場合、どれぐらいの慰謝料を払うことになりそうかと尋ねました。それに対し、『おそらくかかっても100~150万円ぐらい』との回答でしたので、そういったリスクも承知のうえで画像公開したのです。
今回の一連の対応は、代表取締役である私がすべての責任を負うつもりで行いましたが、ホームページでもお伝えしていたとおり、弊社の要望は『盗んだ商品を返してほしい』『犯人に二度と同じことを繰り返してほしくない』ということだけです。私刑として制裁を加えようといった意図は一切ございませんでした。
それに今だから言いますが、期限が来てもモザイクなしの画像を公開するつもりなんて最初からありませんでした。私どもの立場からすると、なんとかして犯人にプレッシャーをかける、追い詰める方法はないかと考えた結果、リスクを負ってでもああいった対応をするしかなかったのです」(同)
2015年の全国の万引き件数は12万件弱、被害額は約4600億円にも上ると推計されており、このうち3割は検挙されず見逃されてしまっているという。
また、この12万件は警察に届け出があった件数だけであるという事実を考えれば、実際の万引き件数や、犯人が逃げおおせている実数はそれよりはるかに多い可能性もある。
今回の「めがねおー」の対応について批判する声もあったが、その影には、多額の万引き被害に悩んだ末の苦渋の選択があった。
(文=昌谷大介、森井隆二郎/A4studio)