「会談の成果は今のところまったくないけど、仲良くはなれたよ」
トランプ米大統領は米中首脳会談1日目の6日の夕食会の前に、こう述べたが、この言葉が今回の首脳会談を端的に表しているようだ。というのも、報道を見る限り、貿易や外交、安全保障では際立った進展はなく、従来のままだからだ。
目新しい点といえば、トランプ大統領がシリアへのミサイル攻撃を命令し、夕食会の終了間際に「シリア空爆」のニュースが飛び込んできたことで、従来はシリア寄りだったはずの中国だが、習近平国家主席はトランプ大統領に「空爆を理解する」と妥協したことだ。初対面から習主席はトランプ大統領の“毒気”に当てられたといえよう。
その結果、7日の会談終了後も両首脳による共同記者会見は開かれず、共同声明も発表されなかった。今年2月の日米首脳会談では共同会見は行われ、共同声明も発表されており、日米関係と米中関係の親密度の差が如実に表れたかたちだ。それはとりも直さず、トランプ大統領がどちらをより信頼しているかを示しているといえよう。
また、このような米中首脳の関係のよそよそしさを大きく印象付けたのは、習主席がトランプ氏の別荘に宿泊せず、習主席一行が別荘から10キロも離れたホテルに陣取ったことだ。このため、中国側は夕食会が終わると、そそくさとホテルに引き上げたという。
習主席からすれば、トランプ大統領が所有している別荘に泊まれば、どこに盗聴器がつけられているかもわからず、側近らと相談もできないということなのだろう。つまり、習主席はトランプ大統領を信頼しておらず、それがトランプ大統領の懐に飛び込んでいった安倍首相との大きな差となったのだ。
北朝鮮対応に苦慮
これらは今回の米中首脳会談の印象的な点だが、具体的な「合意事項」をみてみよう。
米側の発表では今回の「成果」として、トランプ大統領が年内に訪中することや貿易不均衡是正のための100日計画を策定すること、さらに対北朝鮮で協力を強化することのほか、双方で次の4点について対話のメカニズムを新設することを挙げている。それは、
(1)外交・安全保障
(2)経済全般
(3)法執行とサイバーセキュリティー
(4)社会・文化交流
だが、これらはオバマ前政権でも「米中戦略・経済対話」でさんざん話し合われているはずだ。また、オバマ・習会談でも個別の重要問題は協議されており、なんら新鮮さはない。