ビジネスジャーナル > 社会ニュース > CIA、米メディアと強固な協力関係  > 3ページ目
NEW
筈井利人「陰謀論を笑うな!」

CIA、米主要メディアと強固な協力関係…偽ニュース流布で軍事介入、職員が記者活動も

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
【この記事のキーワード】, , ,

 記者の多くは従順だった。イランやグアテマラの政権転覆を図るCIAの謀略について知っていたが、何も書かなかった。CIAへの協力は愛国的な市民の義務と信じたからだ。もっと単純に、機密情報を知る特権によって特ダネをものにできると感謝してもいた。

 こうしたメディア側の態度は、CIAにとって好都合だった。担当者のウィズナーは、メディアを「(CIAの好きな音楽だけがかかる)巨大なジュークボックス」にしたようなものだと自慢した(スティーブン・キンザー、渡辺惣樹訳『ダレス兄弟』<草思社>)。

 やがてモッキンバード作戦はその存在が知られるようになり、75年の上院情報活動調査特別委員会(チャーチ委員会)で実態が明らかにされた。翌76年2月、新任のジョージ・ブッシュCIA長官(のちの大統領、父ブッシュ)が、ジャーナリストの無償の自発的協力は引き続き「歓迎」するものの、金銭供与を伴う協力は廃止する方針を表明した。

 その後、報道機関がCIAや政府との癒着を完全に断ち切ったかどうかは定かでない。しかし少なくとも外から見る限り、政府に都合の良い情報を無批判に垂れ流す体質は改まっていない。

 その典型は、2003年に米国がイラクを先制攻撃したイラク戦争の際の報道である。米政府はイラクが大量破壊兵器を保有しているなどと根拠のない主張をし、報道機関はそれらをほとんどなんの検証もしないまま流布させた。偽ニュースをばらまいたのだ。これではトランプ大統領の偽ニュース呼ばわりに胸を張って反論できまい。

 偽ニュースというと、怪しげなウェブサイトや交流サイト(SNS)の匿名投稿などを通じ流布されるイメージが強い。だから一流の報道機関が政府と結託して嘘ニュースを流すなどと聞くと、「陰謀論」だと笑って否定したくなるかもしれない。

 しかし今回述べたモッキンバード作戦のように、陰謀論には正しいものもある。笑い飛ばす前に、歴史上の事実を学んでみよう。きっと真実を見抜く目が養われるはずだ。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

◆参照文献(本文に記載したものを原則除く)
Bernstein, Carl. October 1977. “The CIA and the Media”. Rolling Stone Magazine.
Thomas, Evan. 2006. The Very Best Men: The Daring Early Years of the CIA. Simon & Schuster.
Wilford, Hugh. 2009. The Mighty Wurlitzer: How the CIA Played America. Harvard University Press.

筈井利人/経済ジャーナリスト

筈井利人/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト

CIA、米主要メディアと強固な協力関係…偽ニュース流布で軍事介入、職員が記者活動ものページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!